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FCLP 異例の直談判 岩国市長ら 国に拒否要請 防衛相「やむを得ない」

 在日米海軍が米軍岩国基地(岩国市)で17日から始める空母艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)。岩国市の福田良彦市長たちは16日に上京して中谷元防衛相と岩屋毅外相に直接、訓練取りやめを米側に申し入れるよう求めたが、国側は訓練の重要性や防衛施設の整備状況を説明するにとどまった。(堀晋也、長久豪佑、宮野史康)

 福田市長や同市議会の片岡勝則議長がこの日、両大臣と面会。「激しい騒音をもたらすFCLPについては、容認できない。周辺住民に一層の負担を強いるもので、到底容認できない」とする要請書を手渡した。

 福田市長は「FCLPを実施しないこと」が2017年の空母艦載機受け入れの前提条件だったと主張し、岩国で訓練を実施しないよう要求した。福田市長は市政運営の方向性で「基地との共存」を掲げ、国や米軍の施策に理解を示し受け入れる場面も多いだけに異例の「直談判」だった。

 しかし、国側との見解の溝は埋まらなかった。防衛省は米側に伝えると応じたものの、訓練について中谷氏は「わが国の防衛、地域における米国の抑止力強化のため非常に意義がある。やむを得ない」との認識を示した。

 FCLPの硫黄島からの移転を見据え福田市長は、防衛省が進める鹿児島県西之表市の馬毛島での自衛隊基地の建設についても問うた。防衛省は滑走路の舗装工事などの進み具合を説明。外務省では岩屋氏が「準備が進められているがまだ少し時間がかかる。その意味では大変申し訳なく思っている」と謝罪した。

 福田市長の要請には、山口県などでつくる県基地関係県市町連絡協議会のメンバーも同行。また福田市長たちはこの日、両大臣への面会に先立ち、在日米大使館も訪ねてジョージ・グラス大使とも協議した。15日には、県や岩国、柳井両市と周防大島、和木町の議員などでつくる岩国基地問題議員連盟連絡協議会も同様の要請をした。

 岩国市は17日、市職員の情報収集を徹底する方針。仮にFCLPが始まった場合、福田市長が18日に基地周辺へ出向き、自ら状況を確認する予定でいる。

地元市民団体 抗議の声

 岩国市の米軍岩国基地が、FCLPで使われると国から市と山口県に伝えられたことを巡り、岩国基地での訓練の取りやめを求めて市民団体が相次いで声を上げている。

 市民団体「住民投票を力にする会」は15日、JR岩国駅西口で抗議の街頭活動をした。呼びかけに応じた約20人が参加。「私たちは平穏な生活壊す着艦訓練を許しません」と書いた横断幕を掲げてマイクを握った代表の松田一志市議(68)は「17日から強行予定のFCLPは濃密に滑走路が使われ、長時間爆音をまき散らす。そんな訓練は断じて容認できない」と力を込めた。

 16日は、同会と、基地周辺の航空機騒音の第2次訴訟の原告たちでつくる「岩国爆音訴訟の会」がそれぞれ岩国市役所を訪れ、米軍や国に訓練中止を働きかけるよう市に申し入れた。市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」は内閣官房などに宛てて中止を求める要請文を郵送した。

 岩国爆音訴訟の会の三木健二共同代表(84)は「高齢者や病弱の方、幼児に大きな負担、影響がある。市には今回だけでなく、将来にわたって国と米軍にFCLPは岩国ではしないと確約を取り付けるよう求めたい」と強調した。(川村奈菜)

「市民の安心のため主張」「強行なら厳しい姿勢」

近隣 広島の首長が相次ぎ反対

 米軍岩国基地でのFCLPの実施を巡り、広島県内の近隣自治体の首長たちが16日、反対する姿勢を相次ぎ示した。

 大竹市の入山欣郎市長は市議会一般質問で「市民の安心のために主張するべきことはしっかり伝えていきたい」と説明。同市は16日付で防衛省に岩国基地で実施しないよう書面で申し入れた。

 廿日市市の松本太郎市長も記者会見で「断じて容認できない」と強調。12日付で要請書を同省や米軍に提出しており「仮に米軍が訓練を強行するなら、改めて厳しい姿勢をとらなければならない」と訴えた。

 広島県の湯崎英彦知事もこの日、FCLPの中止を求める要請書を日米両政府などに送付。同基地での実施決定について「誠に遺憾。騒音被害など地元住民に多大な影響を与えることとなり、断じて容認することはできない」としている。

(2025年9月17日朝刊掲載)

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