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響く爆音 市民いら立ち 岩国でFCLP強行 「家の中でも音する」

 17日午後、25年ぶりに米軍岩国基地(岩国市)で始まった陸上空母離着陸訓練(FCLP)。基地周辺には「ゴー」という激しい音が繰り返し鳴り響き、市民はいら立ちを募らせた。自治体側が繰り返し、実施しないよう求める中での「強行」に反発の声が上がった。(川村奈菜、長久豪佑、関家かれん)

 午後1時半過ぎ。ステルス戦闘機F35Cが3機離陸した。上空を旋回し、高度を下げる。車輪を滑走路に着けると同時に出力を上げて再び上昇していく。「タッチ・アンド・ゴー」と呼ばれる訓練で、再上昇の際に「ゴー」という爆音が響いた。別の機体と入れ替わって離着陸は数十秒ほどの間隔で続いた。

 滑走路が見渡せる今津川沿いの堤防には、岩国市と山口県の担当者各1人が張り付き、離着陸の回数をカウントしていた。堤防で基地の監視を続ける戸村良人さん(79)=同市=は「いつもと違い騒音がずっと続く感じ。近くに住む人はやれんじゃろう」と漏らした。

 基地に近い旭町の末岡美智子さん(84)は「家の中でもゴーと音がする。やめてもらいたい」と憤り、「市長をはじめ地元が反対しているのに、大国の都合で始まった」と嘆いた。末岡さんは25年前の前回の訓練も「怖かった」という。市民にはこうした記憶が残るためFCLPへの拒否反応が根強い。

 近くの倉庫では、自営業男性(69)が知人2人と荷物の搬入のためドアを開けて作業していた。「うるさいので、会話が聞こえないことがある。暑いので余計にいらいらする」とぼやいた。

 午後6時45分ごろ。暗闇の中、戦闘機が次々と飛び立ち、夜の訓練を始めた。堤防では市民団体が呼びかけ、有志6人が「米軍言いなりの国に抗議する」などと批判の声を上げた。この声も時折、騒音で遮られた。

 基地機能強化に反対する市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典共同代表(69)は「今後も岩国でやりたいのだろう。沖合移設した滑走路で実施し市民の反応を見たいのではないか」と推測した。今後も監視を続けるという。

日中騒音 各100回超 基地周辺2ヵ所

 米空母艦載機によるFCLPが始まった17日、岩国市は米軍岩国基地付近での騒音測定状況(速報値)を公表した。基地北側の同市川口町の計測地点では132回、南側の尾津町では158回の騒音を記録した。騒音の最高値は地下鉄の車内とほぼ同じ89・0デシベルに上った。

 市基地政策課が、日中の訓練時間中に70デシベル以上の騒音を5秒以上測定した回数をまとめた。川口町では昨年9月の1日平均の約9倍、尾津町では約10倍となった。平常時を大きく上回っており、訓練で生じる騒音回数の多さを裏付けた。

 騒音の最大値は川口町で午後2時32分に88・7デシベル、尾津町で午後3時51分に89・0デシベルを計測した。80デシベルで「交通量の多い道路」、90デシベルで「地下鉄の車内」に相当する。

 また市職員による目視確認によると、日中の訓練での「タッチ・アンド・ゴー」は66回だった。市には騒音による苦情が52件寄せられた。訓練は夜間にも実施され、騒音はさらに増えた。(長久豪佑)

(2025年9月18日朝刊掲載)

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