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入野さん作品 母校基町高へ 東区出身画家 遺族が寄 「命のエネルギー感じて」

 広島拘置所(広島市中区)の外壁の壁画で知られる東区出身の画家入野忠芳さん(2013年に73歳で死去)の代表作「裂罅(れっか)」シリーズの一つが、遺族から母校の基町高(中区)へ寄贈された。核の脅威を連想させる油彩画で、「多くの後輩に見てほしい」という入野さんの遺志を踏まえたという。(加納亜弥)

 ひび割れて裂けた球体をモチーフにしたシリーズのうち、贈られたのは1976年制作の「裂罅76―11」。死者と生者が引き裂かれたヒロシマの姿を重ねたかのような球体から、新たな球体が誕生している。

 入野さんは5歳の時に路面電車との接触事故で左腕の肘から先を失い、その半年後に被爆。ヒロシマをテーマにした作品を数多く手がけた。89年には広島城築城400年記念事業として、拘置所の外壁約200メートルに江戸時代の城下町の風景を描いた。

 妻の泰子さん(75)=東区=は「崩壊してもまた生成される。そんな生命のエネルギーを、作品から感じてほしい」と願う。徳丸憲之校長は「直接的でなくても平和への思いが伝わる。生徒もその技法や感性を受け止めてほしい」と感謝している。

(2025年9月22日朝刊掲載)

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