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戦争と美術、美術と平和 <2> 丸木位里「池」(1936年)

抑圧の違和感語る作品も

 全4章構成の第2章は広島を中心とした日本の戦中・戦後の美術作品が並ぶ。戦時色が強まり国策に沿った作品が作られた一方、抑圧への違和感を語る作品もあり、美術も社会的、政治的動向と無関係ではいられないことが分かる。

 この章の一角に、現在の原爆ドームで展示されたことのある作品6点が並んでいる。原爆ドームは1915年に広島県物産陳列館(後に広島県立商品陳列所、広島県産業奨励館に改称)として建てられ、産業振興のための展示のほか、多くの美術展が開催された。

 丸木位里「池」は、36年開催の芸州美術協会展出品作。友人の靉光(あいみつ)らの助言を受けたキュービスム的な多視点構図が特徴。彼らは互いに刺激し合いながら創作に打ち込んだ。

 同館を気に入った位里は「なかなかええ会場だよ」と語った。同館は確かに、戦前の人々の暮らしの中に息づく美術館でもあった。(広島県立美術館主任学芸員・神内有理)

 「戦争と美術、美術と平和」は、広島市中区の広島県立美術館で10月5日まで。会期中無休。

(2025年9月20日朝刊掲載)

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