×

未分類

ナチスゆかりの記章 公開 福山のホロコースト記念館 収集の元米軍人 寄贈 館長「加害側の存在伝える」

 第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を伝えるホロコースト記念館(福山市御幸町)に今月、ナチスゆかりの記章が届いた。戦後に現地で収集した元米軍人の男性が、5月に市内であった世界バラ会議福山大会で同館を訪れたのを機に寄贈した。同館は「加害の歴史を伝える貴重な資料」として公開を始めた。(浜村満大)

 記章は9種類。縦横2・5~7センチの大きさで、ナチスの象徴だったハーケンクロイツ(かぎ十字)やワシ、ヒトラーの肖像画をかたどっている。大戦のきっかけとなったナチスのポーランド侵攻の年と同じ「1939」と刻まれたものもあり、ナチス関係者が着用していたとみられる。

 米国からバラ会議に参加したジョン・モーさんが、プログラムの一環で、虐殺で犠牲となったアンネ・フランクをしのんで開発された「アンネのバラ」を育てる同館を見学。ゆかりの品を贈ると約束していた。

 モーさんは米軍の一員として戦後の1959~62年、ナチスが設立した最初の常設強制収容所があったドイツ・ダッハウに駐在。事務所の窓からは強制収容所の火葬場の煙突が見えたという。滞在中、収容所について独自に調査し、今回寄贈した記章などの資料を収集していた。

 記章とともに送った手紙でモーさんは「素晴らしい展示に加えてくれることを願っている。二度とこのようなことが起こらないことを祈る」としたためている。

 今年で開館30周年の節目を迎えた同館は、ホロコーストで命を落とした幼い子どもの靴、収容者が着用した囚人服など犠牲者の遺品や資料約500点を展示する。アンネの隠れ家の部屋も再現している。

 吉田明生館長は「図らずも出会いがあり、心を込めて送ってもらった。加害側の存在を伝える品で、ナチスの歴史の証人とも言える」と寄贈に感謝している。

(2025年9月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ