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社説・コラム

『ひと・とき』 ビジュアルアーティスト 竹内としえさん

ウラン鉱山の秘史に光

 今夏に広島市中区のギャラリーGであった現代美術展「シンコロブウェ:権力と記憶のはざま」に、米国、コンゴ(旧ザイール)出身の作家と共に参加。コンゴのウラン鉱山の知られざる歴史に多面的に迫る展示を構成した。

 シンコロブウェは、広島・長崎の原爆に使われたウランも産出した鉱山の名。当時ベルギーの植民地だったコンゴにあり、鉱石の純度の高さに米国が目を付けた。他方で鉱山に関する情報は、採掘する労働者の健康被害も含めて長く秘匿された。

 「原爆について語るとき、日米関係ばかりに焦点が当たる」。植民地ゆえに見えにくくされてきた被害に向き合うため、「自分のまなざしをどうディコロナイズ(植民地主義から離脱)させるか」―。コンゴでの作品展も経て、そんな問題意識で創作に挑んだという。

 120枚を超える写真を壁に貼った作品は、鉱山の歴史や現状、広島・長崎の核被害などを伝えるとともに、植民地主義を内包する「近代」を告発した。例えば作中には、1958年のブリュッセル万博の会場写真も。原子力産業など近代科学の成果を誇る一方で、コンゴの村を再現して現地の人を「見せ物」にした万博に、再考の光を当てた。

 愛知県出身。20年余り欧州を転々とする中で、「地域コミュニティーと協働する」作風を確立していった。現在はデンマーク在住。(道面雅量)

(2025年9月27日朝刊掲載)

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