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沖縄「土地闘争」 写真で回顧 阿波根昌鴻の平和思想たどる きょうから広島県立美術館

 沖縄・伊江島で米軍による強制土地収用にあらがい、農民・反戦地主として平和運動に尽くした阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)(1901~2002年)。「土地闘争」と呼ばれたその闘いの日々を自ら記録した貴重な写真が30日から、広島市中区の広島県立美術館県民ギャラリーで展示される。

 著書「米軍と農民」「命こそ宝」(いずれも岩波新書)でも知られる阿波根の平和思想に改めて光を当てようと、巡回展実行委員会などが主催する。10月5日まで。

 沖縄戦の激戦地でもあった伊江島には1955年、武装米兵が再上陸し、爆撃の演習場にするために住民から土地を奪った。家や畑を押しつぶし、「銃剣とブルドーザー」と呼ばれた強制収用で、沖縄各地に拡大。阿波根たちは米軍の非道や住民の苦境を訴え、那覇での座り込みや沖縄本島を縦断する行進を繰り広げ、土地闘争をリードした。

 米兵と向き合う際に「耳より上に手をあげない」などの規定を設け、非暴力に徹した闘い。阿波根は、土地収用による生活の破壊や基地被害の証拠、闘争の記録を残すため、カメラを手にする。

 阿波根宅を含むがれきと化した家の跡、避難した幕舎(テント)での暮らし、切々と訴えを掲げた座り込みや行進…。55年から約10年間にわたり撮影され、島の人々の豊かな表情も捉えた写真群は近年、再び注目を集め、沖縄県外でも展覧会が相次ぐ。

 今回の巡回展は「否戦の心と人間愛の眼 阿波根昌鴻写真展」と題し、那覇、川崎、札幌の各市を経て広島会場に約400点が並ぶ。無料。3日午後2時からギャラリートーク、4日午後1時半から同館講堂でシンポジウムもある。

 沖縄出身で広島展を世話する嶋田智恵美さん(78)=安佐南区=は「阿波根さんの写真は、記録でもあり表現でもあるような魅力をたたえる。被爆80年の広島で、平和を共に考える場にしたい」と話す。(道面雅量)

(2025年9月30日朝刊掲載)

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