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被爆の南方留学生 関西で語り継ぐ 京都で死去のオマールさん 住民グループが毎年法要

 広島で原爆に遭い、京都で亡くなった「南方特別留学生」のサイド・オマールさんを語り継ぐ輪が広がっている。京都市で住民グループが発足し法要を引き継いだことで関心が徐々に高まり、主に関西圏で動画制作など新たな取り組みが生まれている。

 オマールさんは1943年にマレーシアから来日し、広島文理科大(現広島大)に留学中に被爆した。終戦後、帰国途中に原爆症を発症し、京都で入院。45年9月に19歳で逝った。広島と京都の関係者が毎年集まってしのんできたが、2008年で活動は途絶えた。

 存在を知る人が減る中、京都の元小学校教諭の早川幸生さん(77)が呼びかけ、19年に有志で新たな会をつくった。法要を毎年営み、参列者は多い年で約200人に上る。紙芝居を上演するなどし継承に努めている。

 兵庫県尼崎市の榊原恵美子さん(58)は、早川さんの活動に影響を受け、独自で南方特別留学生を語り継ぐ活動を始めた。もともと原爆や戦争の惨禍を伝えるプロジェクトを始めたいという気持ちがあった。

 早川さんを講師に迎え神戸市で講演会を開き、動画投稿サイト「ユーチューブ」にオマールさんを紹介する動画をアップした。「若い人が親にも会えず異国で命を落とした。その悲しみから学ぶことは多くある」と受け止める。

 このほか京都市ではオマールさんの絵本を書いたり、肖像画を描いたりする市民の動きもある。早川さんは「じわじわと輪が広がってきた。外国人被爆者を通じて、日本の加害の側面にも目を向けてもらいたい」と話す。(山本祐司)

(2025年10月6日朝刊掲載)

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