「核と人類 共存できぬ」 広島宣言など採択 世界フォーラム閉幕
25年10月7日
「世界核被害者フォーラム」は2日目の6日、広島市中区で会議を開き、二つの宣言を採択して閉幕した。「核と人類は共存できない」と強調し、被害者は医療や救済を受ける権利があると訴えた。
「広島宣言」では、核被害は原爆や核実験、ウラン採掘、劣化ウラン弾など広範に及ぶと定義。「核時代を終わらせない限り、人類はいつでもヒバクシャになりうる」と強調した。核兵器禁止条約の制定を歓迎しつつ、ウラン採掘など先住民の被害が抜け落ちていると「憂慮」を示した。
「世界核被害者の権利宣言」では、すべての人が被曝(ひばく)労働を強制されない権利があるなどと提起した。両宣言は各国の政府や議会への働きかけに生かす。
この日は二つのセッションも開き、約250人が聴いた。米国が核実験場にしたマーシャル諸島や、イラクの劣化ウラン弾などを海外8カ国の被害者や専門家が報告したほか、国内からは東京電力福島第1原発事故の被害者たちが登壇した。
フォーラムは広島と米国の反核2団体が2015年に続いて開催した。(下高充生)
世界核被害者フォーラムの議論は、核利用が目的を問わず市民の平穏な生活を奪う暴力性を帯びることを示した。他方、核産業で当座の生計を立てざるを得ない労働者たちが現実に存在しており、核廃絶運動が向き合うべき課題の複雑さも浮き彫りにした。
各地からの報告によると、原爆や原発の原料となるウラン採掘などの最前線にいる労働者は、貧困の中で日々の暮らしを成り立たせるために働いているという。「放射線は確かに人を殺すが、飢えもまた私たちを殺す」。インドのウラン鉱山の被害を告発してきたジャーナリストは、住民の率直な声を代弁した。
長期に及ぶ健康被害を防ぐためでもある核廃絶運動が、短期的には住民の生活の糧を奪う側面がある。そうなると、住民は声を上げなくなる。
インドの別の活動家は「核暴力」が市民を分断し、批判的な思考を失わせているとし「闘いが忘れ去られ、無力に感じることもある」と語った。彼らを孤立させないためにも、このフォーラムのような機会が今後も必要だ。(下高充生)
(2025年10月7日朝刊掲載)
「広島宣言」では、核被害は原爆や核実験、ウラン採掘、劣化ウラン弾など広範に及ぶと定義。「核時代を終わらせない限り、人類はいつでもヒバクシャになりうる」と強調した。核兵器禁止条約の制定を歓迎しつつ、ウラン採掘など先住民の被害が抜け落ちていると「憂慮」を示した。
「世界核被害者の権利宣言」では、すべての人が被曝(ひばく)労働を強制されない権利があるなどと提起した。両宣言は各国の政府や議会への働きかけに生かす。
この日は二つのセッションも開き、約250人が聴いた。米国が核実験場にしたマーシャル諸島や、イラクの劣化ウラン弾などを海外8カ国の被害者や専門家が報告したほか、国内からは東京電力福島第1原発事故の被害者たちが登壇した。
フォーラムは広島と米国の反核2団体が2015年に続いて開催した。(下高充生)
【解説】問題の複雑さ明るみに
世界核被害者フォーラムの議論は、核利用が目的を問わず市民の平穏な生活を奪う暴力性を帯びることを示した。他方、核産業で当座の生計を立てざるを得ない労働者たちが現実に存在しており、核廃絶運動が向き合うべき課題の複雑さも浮き彫りにした。
各地からの報告によると、原爆や原発の原料となるウラン採掘などの最前線にいる労働者は、貧困の中で日々の暮らしを成り立たせるために働いているという。「放射線は確かに人を殺すが、飢えもまた私たちを殺す」。インドのウラン鉱山の被害を告発してきたジャーナリストは、住民の率直な声を代弁した。
長期に及ぶ健康被害を防ぐためでもある核廃絶運動が、短期的には住民の生活の糧を奪う側面がある。そうなると、住民は声を上げなくなる。
インドの別の活動家は「核暴力」が市民を分断し、批判的な思考を失わせているとし「闘いが忘れ去られ、無力に感じることもある」と語った。彼らを孤立させないためにも、このフォーラムのような機会が今後も必要だ。(下高充生)
(2025年10月7日朝刊掲載)