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被爆ピアノ デジタル音源に 電子ピアノ完成 広島で15日初披露

 被爆ピアノの音色をデジタル化した電子ピアノが完成し、15日に広島市中区で巨匠マルタ・アルゲリッチや角野隼斗たちが出演するピアノコンサート内で初披露される。戦禍を乗り越えた被爆楽器の音色を次世代へつなぐ、世界初の試みだ。

 被爆80年に合わせ、電子楽器などを製造する大手電機メーカーが企画した。ピアノは19歳で被爆死した女学生・河本明子さんの遺品で、普段は平和記念公園(中区)のレストハウスに展示。7月、市内のスタジオへ運び、プロ奏者が全88鍵をさまざまな強度で弾き、一音一音を録音・デジタル化した。

 ピアノは約100年前に米国ボールドウィン社が製造。2005年、傷みが激しい状態だったのを、調律師の坂井原浩さん(61)=安佐北区=が修復した。録音に立ち合った坂井原さんは「老朽化が進んでいるが、歴史を紡ぐピアノ。できるだけ現状の音色を再現してもらった」と話す。

 この「明子さんのピアノ」を所有し、平和活動に取り組む市民団体HOPEプロジェクトの二口とみゑ代表(76)は「最新技術で、ピアノのメッセージが次世代へ受け継がれてほしい」と願う。

 コンサートは広島文化学園HBGホール(中区)で午後6時45分開演。グランドピアノや被爆ピアノでショパンの名曲などを奏で、電子ピアノの音色も紹介する。7700円。広響事務局☎082(532)3080。(桑島美帆)

(2025年10月9日朝刊掲載)

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