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[被爆80年] 奪われた暮らしの証し 原爆資料館 23年度分新着展始まる 茶わんや学徒名札など126点

 原爆資料館(広島市中区)へ2023年度に寄贈された被爆資料や遺品を紹介する新着資料展が9日、東館1階の企画展示室で始まった。焼け落ちた住宅跡から掘り出された茶わん、原爆に命を奪われた学徒の名札など126点が並ぶ。来年2月1日まで。無料。

 爆心地から1キロの上流川町(現中区)にあった住宅跡の茶わんは、西区の渡辺俊一さん(86)が寄贈した。当時6歳。自らは京橋川で釣りをしていて命をつないだが、祖母、母、姉、妹の4人が原爆死し、職場にいた父もけがを負った。

 この日、夫婦で来場した渡辺さんは戦後の暮らしを振り返り、「ご飯が欲しいとき、誰に言えばいいか分からず、いつも周りの大人に頭を下げて頼んでいた」と話した。

 県立広島第一高等女学校(現皆実高)1年だった倉西美智枝さんの校章や名札も展示してある。建物疎開作業に駆り出され、犠牲となった。やはり学徒動員されて亡くなった女学生が手がけた書道作品や、小学生の集団疎開を引率した教員の日誌もある。資料館には23年度、計1449点の資料が寄せられたという。

 展示室ではこの日、市などが1995年に始めた海外での原爆展の歩みをたどる特別展も始まった。(下高充生)

(2025年10月10日朝刊掲載)

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