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連載・特集

緑地帯 瀬戸一樹 「写真でみる広島の神社」編集余話⑤

 広島市中心部の神社は、原爆で壊滅的な被害を受け、大半の資料や写真を焼失した。しかし今回、古写真を集めていくうちに、疎開先などで焼失を免れた貴重な写真が多数寄せられた。

 爆心地に近い空鞘稲生(そらさやいなお)神社(中区)では、1930年に社殿を正面から撮影した1枚が残っている。被爆前の姿を今に伝えており、写真集では、緑豊かな木々に囲まれた現在の写真と並べて掲載した。「神職からのメッセージ」欄では、禰宜(ねぎ)の内田久紀さんが「地域の方々の力により、徐々に賑(にぎ)わいを取り戻しながら、現在に至ります」と説明している。

 そして、現在は広島城跡(中区基町)に移設されている広島護国神社。戦前、現在ひろしまゲートパークがある辺りに鎮座していた頃の社殿や石鳥居の絵はがき、復興期の神楽のにぎわいを撮影したカットを広島市公文書館から提供してもらった。広島護国神社は、戦没者をまつっており、原爆に耐えた石鳥居も移設されている。

 インターネットで新たに見つかった写真もある。瓦礫(がれき)の中に立ち尽くす比治山神社(南区)の石鳥居と標柱だ。被爆直後に撮影されたとみられ、現宮司の長女である大巳知恵さんがネットで発見。所有者と交渉を重ねて画像データを提供していただいた。米兵のアルバムに残されていたという。47年ごろに再建された仮社殿の写真とともに収録した。被爆後の惨状と復興の過程が垣間見えると思う。(広島県青年神職会会長=廿日市市)

(2025年10月14日朝刊掲載)

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