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連載・特集

緑地帯 瀬戸一樹 「写真でみる広島の神社」編集余話③

 「戦前戦後の神社の写真集を出そう」と決めたものの、事務局に古い写真がそろっているわけではない。いざ編集作業が始まると、写真収集がいかに大変なのかを身に染みて感じた。

 まず、各神社の行事に出向いて写真の提供をお願いし、図書館や広島市公文書館などが所蔵する写真と絵はがきを一枚一枚調べることから始めた。ネット検索で発見することもあったし、社務所で貴重な写真と遭遇することもあった。

 ある神社では、宮司さんに写真集の説明をしている最中、壁に古い写真が飾られていることに気付いた。昭和初期に境内の石段で撮影された記念写真だった。別の神社でも、拝殿内に祭礼の集合写真などが飾られていることが多々あった。

 そんな時は、思わず「見つけた!」と心の中で叫び、すぐに写真の提供を打診した。客観的に見れば貴重な歴史資料であるにもかかわらず、神職や氏子さんにとってはいつも見慣れている古い写真だ。大抵、「このような写真でいいんですか」と驚かれた。

 最終的に、県内104社から約450枚の写真が寄せられた。当時、青年神職会の事務局長だった池田憲明さんがすべてデジタル化し、明治-昭和期に撮影された203枚を写真集に収録した。一枚一枚に、社殿の面影はもちろん、伝統行事のにぎわいや人々の暮らしなどが克明に写し出されている。戦禍を乗り越え、今まで残されてきたことが奇跡に思えた。(広島県青年神職会会長=廿日市市)

(2025年10月9日朝刊掲載)

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