×

ニュース

緑地帯 瀬戸一樹 「写真でみる広島の神社」編集余話①

 速谷神社(廿日市市)の権禰宜(ごんねぎ)である私は、今年4月、広島県青年神職会の会長に就任した。40歳以下の神職約70人で構成。年間を通して、福祉施設で神棚祭を行ったり、神職子弟を集めて、伝統文化の体験学習などを開いたりしている。

 1953年、県青年神職会は発足した。戦後の混乱期、日本の伝統を守り次世代に継承しようと、若手神職が被爆の直接的な被害を免れた神田神社(広島市南区)に集結した。

 2023年、創立70周年の記念誌を作ることになった。発案者は、当時の会長で広島東照宮(東区)神職の久保田峻司さん。「文章で会の歴史をつづるのではなく、戦前の神社の写真集を」。しかも「君に担当してもらいたい」と言われた。

 ある会議で久保田さんのパソコンのデスクトップに美しい神社の写真が使われていたことを思い出した。「偶然、原爆の被害を受ける前の東照宮の古写真を蔵の中で発見した」と目を輝かせて説明してくださった。

 「自分が力になれることなら、頑張ってみよう」と引き受けたものの、「原爆で壊滅した市内には、もう古写真は残っていないのではないか」という不安もよぎった。ただ、視覚にダイレクトに訴えかける写真のパワーは、あの日の久保田さんのまなざしが証明してくれていた。「素晴らしい写真集ができる」。何故か自信が湧いてきた。(せと・かずき 広島県青年神職会会長=廿日市市)

(2025年10月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ