レイノルズさんの遺産 米平和資料センター50年 <中> 活用
25年10月24日
反核運動の資料 アートに
「想像してほしい。(平和運動家のバーバラ・レイノルズさんの行動が)驚くべき芸術作品へとつながった」。美術史を研究する米オークランド大のクロード・バイアルジョン教授の声が、オハイオ州のウィルミントン大のギャラリーに響いた。同大平和資料センターの設立50周年を記念し、被爆体験の継承をテーマにした作品の展覧会が12月上旬まで開かれている。
センターは、レイノルズさんが広島から持ち帰った膨大な資料のほか、広島の市民が送った原爆関連の本や文献などを所蔵する。その数は文書約4万点、書籍約1400冊…。アーカイブ(保存記録)は核問題の研究者にとどまらず、芸術家にも活用されている。
近郊のイエロースプリングスに住む東京出身のミギワ・オリモさん(68)は、レイノルズさん一家の世界一周の航海(1954~60年)をモチーフの一つにした作品を展覧会に出した。ヨットの設計図や南太平洋での核実験に抗議したレイノルズさんたちが載る新聞記事をあしらった。
いずれもセンターが所蔵する資料を素材として使った。オリモさんは「資料が作品になることで、冬眠から覚めて訴えになる」と語る。他にも被爆体験記など本の背表紙ときのこ雲、被爆者の写真集をモチーフにした。歴史の事実を可視化すると同時に、歴史から目を背けたくなる人間の内面を表現したという。
展覧会には、メリーランド州在住の伊東慧(けい)さん(34)の作品も並んだ。広島で被爆し、日本被団協の代表委員を務めた故伊東壮(たけし)さんの孫だ。原爆の被爆者と、米国の核実験による被害者の目の写真を集めた巨大アート。素材は自分で撮って集めるなどした。
伊東さんは、資料を使った作品の力を「アートを介して伝えることで、歴史と現在がつながっていると教えてくれる」と言い表す。センターの資料を作品に使う構想も練っている。
所蔵する資料を芸術で表現する取り組みは、センターが市民や社会に開かれていればこそ可能になる。ターニャ・マウス所長は「ここに来る人たちは資料の中にそれぞれ意味を見いだす」と期待している。(山本祐司)
(2025年10月24日朝刊掲載)








