緑地帯 佐々木博光 アマチュア映像65年の歩み⑤
25年10月28日
広島エイト俱楽部初代会長の松原博臣さん(2003年に82歳で死去)は、8ミリフィルムカメラで長男の成長記録を撮影したことがきっかけで、映像制作に魅せられた。広島市西区横川町にあった「聖ケ丘内科医院」の院長で、夫婦ともに医師だった。来院患者は妻に任せ、自身は往診を担当。聴診器とともに8ミリカメラを必ず携帯していた。
情熱はすさまじく、病院1軒が建つくらいの資金を映像制作や倶楽部運営費につぎ込んだ。2年かけて制作した「宮島」(1966年)は、「神の島」である宮島の伝統的な習俗をテーマとした作品だ。夜明け前、大鳥居そばの海水をくんで神にささげる「潮汲(しおく)み」。団子を小さな筏(いかだ)に乗せて海面に浮かべる「御烏喰式(おとぐいしき)」は、「神の使い」のカラスが団子をくわえる瞬間を捉えた。別の船で何日もカメラを構えて待ち、来るか来ないか分からないカラスの飛来を待って収録したという。空撮などにも膨大な制作費をかけている。カンヌ国際アマチュア映画祭で銀賞に輝いた。
67年7月27日、広島市中区寺町の相生橋寄りの土手で、松原さんをはじめ会員たちが撮影会をしていた。そのとき対岸の「原爆スラム」と呼ばれていたバラック群から火災が発生した。住民たちが川へ布団を投げ落として避難する貴重な映像が残る。この大火の映像を盛り込んだ松原さんの「ヒロシマ」は68年のパリ国際アマチュア映画祭レポート部門で1位に選ばれた。(広島エイト倶楽部理事=広島市)
(2025年10月28日朝刊掲載)
情熱はすさまじく、病院1軒が建つくらいの資金を映像制作や倶楽部運営費につぎ込んだ。2年かけて制作した「宮島」(1966年)は、「神の島」である宮島の伝統的な習俗をテーマとした作品だ。夜明け前、大鳥居そばの海水をくんで神にささげる「潮汲(しおく)み」。団子を小さな筏(いかだ)に乗せて海面に浮かべる「御烏喰式(おとぐいしき)」は、「神の使い」のカラスが団子をくわえる瞬間を捉えた。別の船で何日もカメラを構えて待ち、来るか来ないか分からないカラスの飛来を待って収録したという。空撮などにも膨大な制作費をかけている。カンヌ国際アマチュア映画祭で銀賞に輝いた。
67年7月27日、広島市中区寺町の相生橋寄りの土手で、松原さんをはじめ会員たちが撮影会をしていた。そのとき対岸の「原爆スラム」と呼ばれていたバラック群から火災が発生した。住民たちが川へ布団を投げ落として避難する貴重な映像が残る。この大火の映像を盛り込んだ松原さんの「ヒロシマ」は68年のパリ国際アマチュア映画祭レポート部門で1位に選ばれた。(広島エイト倶楽部理事=広島市)
(2025年10月28日朝刊掲載)








