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社説・コラム

『記者のつぶやき』 核軍縮 誓いではなく実行を

 トランプ米大統領は日米首脳会談の冒頭、高市早苗首相が4度繰り出した「平和」の言葉に深くうなずいて反応した。ノーベル平和賞を渇望する自負心をくすぐられたのだろう。「ファンタスティック(素晴らしい)な仕事をしよう」と呼びかけ、上機嫌だった。

 米大統領になれば核兵器の廃絶を実現できる―。昔、友人と膨らませた妄想を思い出した。世界第一の軍事力と経済力を備える国のリーダーがその気になれば、「核の復権」が進む世界の潮流を転換させるぐらい簡単だ、と。トランプ氏は中国、ロシアとの核軍縮協議に意欲を示す。

 だからこそだろう。広島と長崎の両市長をはじめ、トランプ氏の被爆地訪問を期待する声がある。ただ、広島には2016年のオバマ氏、23年のバイデン氏と、すでに2人の現職大統領が来たが、事態は前に進んでいない。空虚な誓いではなく、核軍縮の実行を求めたい。平和賞がぐっと近づく大統領の仕事になるのは間違いない。(宮野史康)

(2025年10月29日朝刊掲載)

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