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被爆者ら 強く抗議 トランプ氏「核実験指示」

 トランプ米大統領が国防総省へ核実験の開始を指示したと表明した30日、広島の被爆者や平和運動家たちは即座に抗議の声を上げ、実験を強行しないよう訴えた。

 「国際世論に対する重大な挑戦だ」。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(83)は県原水禁と連名で、抗議声明を発表した。取材に対し「他国の核軍拡をあおりかねない」と指摘。トランプ氏が韓国の原子力潜水艦建造を承認したと明かした点にも触れ、「日本の政権にも原子力潜水艦の必要性を検討する動きがある。保有を求める声が強まるのでは」と案じた。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(81)は「大統領はノーベル平和賞を熱望しているようだが、核兵器で力を誇示する姿は全く値しない」と非難。高市早苗首相にも「彼を推薦するというが、政府がすべきは核を使えばどうなるか伝え、実験をやめるよう迫ることだ」と苦言を呈した。

 米国は国内外で核実験を重ね、被害者を生んできた。市民団体「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)の田中美穂共同代表(31)は「どれほど被害を出してきたか認識していないのだろう。世界の核被害者と連帯し、発信を強める」と力を込めた。

 NPO法人ピースデポ(横浜市)の梅林宏道特別顧問は、米中首脳会談を直前にした表明だった点に注目。「中国が核実験をするに違いないと考えたのだろう。あくまで対抗措置の脅しで、交渉戦術の一つではないか」との見方を示した。(下高充生、宮野史康)

(2025年10月31日朝刊掲載)

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