会議初期から知る 物理学者小沼さん 「科学に国境ない」今も議論の前線に
25年11月4日
パグウォッシュ会議の議論を初期から知る日本の物理学者がいる。慶応大名誉教授の小沼通二(こぬまみちじ)さん(94)=横浜市=だ。今回も公開討論で登壇するなど最前線で話し合いに加わる。「科学に国境はない。科学と科学者は国家間対立の仲介役になり得る」と、冷戦期に立ち上がった先人たちの精神を受け継いでいる。
小沼さんも発言者となった2日の公開討論。会場にはイスラエルとパレスチナ双方からの参加者もおり、パレスチナ自治区ガザを巡る言及が相次いだ。小沼さんは「一刻も早いガザの平和実現のきっかけや、その貢献に向けた議論につながるはず」とする。
パグウォッシュ会議が設立された1957年当時は東京大大学院生。第1回会議に参加した湯川秀樹氏、朝永振一郎氏たちが中心になり発足した同会議日本グループに最年少で加わった。初参加した65年の会議でベトナム戦争を巡り米国と旧ソ連の関係者が激論を交わす姿に接し、「意見が違うからこそ対話が大事だ」との思いを深めた。
原点は52年、原爆被害に関する記事を雑誌で見たことだ。大やけどを負った人々の写真や原子核分裂の解説が載っていた。「科学はこれほどまでの犠牲を生むのか」。自らの専門と、社会的問題のつながりを自覚した。
95年、日本で初めて開かれた広島での世界大会で組織委員長に。「科学の発展の先にあった原爆のきのこ雲の下で起きた惨状を知ってほしい」と、被爆証言を聴く機会などを設けた。
広島では20年ぶりの世界大会。会場では、ガザ以外にも米大統領による核実験指示の表明やロシアのウクライナ侵攻を巡る議論が白熱している。「核兵器はなくせる。戦争もやめさせられる。そのために科学者たちは話し合い、発信し続けなければならない」と力を込める。(小林可奈)
(2025年11月4日朝刊掲載)
小沼さんも発言者となった2日の公開討論。会場にはイスラエルとパレスチナ双方からの参加者もおり、パレスチナ自治区ガザを巡る言及が相次いだ。小沼さんは「一刻も早いガザの平和実現のきっかけや、その貢献に向けた議論につながるはず」とする。
パグウォッシュ会議が設立された1957年当時は東京大大学院生。第1回会議に参加した湯川秀樹氏、朝永振一郎氏たちが中心になり発足した同会議日本グループに最年少で加わった。初参加した65年の会議でベトナム戦争を巡り米国と旧ソ連の関係者が激論を交わす姿に接し、「意見が違うからこそ対話が大事だ」との思いを深めた。
原点は52年、原爆被害に関する記事を雑誌で見たことだ。大やけどを負った人々の写真や原子核分裂の解説が載っていた。「科学はこれほどまでの犠牲を生むのか」。自らの専門と、社会的問題のつながりを自覚した。
95年、日本で初めて開かれた広島での世界大会で組織委員長に。「科学の発展の先にあった原爆のきのこ雲の下で起きた惨状を知ってほしい」と、被爆証言を聴く機会などを設けた。
広島では20年ぶりの世界大会。会場では、ガザ以外にも米大統領による核実験指示の表明やロシアのウクライナ侵攻を巡る議論が白熱している。「核兵器はなくせる。戦争もやめさせられる。そのために科学者たちは話し合い、発信し続けなければならない」と力を込める。(小林可奈)
(2025年11月4日朝刊掲載)








