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ヒロシマとつなぐ試み 沖縄で「父と暮せば」相次ぎ上演

 広島の原爆被災をテーマにした劇作家井上ひさしの名作「父と暮せば」が今月、沖縄県内で相次いで上演される。戦後80年を意識し、地上戦の惨禍を経験した沖縄とヒロシマをつなぐ試みだ。

 原爆で亡くなった父親の霊が、娘の恋を応援する物語。沖縄市の市民小劇場あしびなーで9日に2回上演する舞台は、沖縄出身の俳優2人が広島弁を駆使して届ける。郷土色豊かな「ウチナー芝居」などを演じる劇団58号線を率いた普久原(ふくはら)明(67)と、同劇団などを経て秋田を拠点とする劇団わらび座で活躍し、沖縄に戻った金城翔子(48)。共演は15年ぶりという。

 沖縄県内では今年、戦後80年にちなんで沖縄戦を描いた舞台が数多く上演された中、あえてこの演目に挑む。娘の美津江役で、演出も担う金城は「大切な人を残して逝った人の魂が、その人のそばに寄り添う―。沖縄の人々にとっても、わがこととして心に響く物語」と力を込める。

 父の竹造を演じる普久原も「作品のすごさに圧倒された」と語り、長いせりふと格闘する。笑いを届ける舞台に定評のあるベテラン。生き延びたことの罪悪感で固まった美津江の心をユーモアで解きほぐす竹造は、はまり役に違いない。

 このほか、座付き作者だった井上の作品を演じるこまつ座(東京)による「父と暮せば」の朗読公演も19日に那覇市の那覇文化芸術劇場なはーと、20、21日に宮古島市の市文化ホール(マティダ市民劇場)である。松角洋平、瀬戸さおりが出演する。(道面雅量)

(2025年11月5日朝刊セレクト掲載)

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