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[被爆80年] パグウォッシュ会議 「広島宣言」発表 対立超えた対話「不可欠」 核兵器使用の危険 警鐘

 核兵器廃絶を目指す科学者たちの国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会は5日、核兵器使用の危険に警鐘を鳴らし対立を超えた対話を求める成果文書「広島宣言」を発表した。広島市中区の広島国際会議場での5日間の討議を終え、閉幕した。(金崎由美)

 広島宣言は「世界は、核兵器使用を抑制してきた規範の崩壊に直面している」とし、「広島と長崎への原爆投下は、戦争の悲劇であるだけでなく、未来に続く人類の良心と道徳の破壊を象徴する」と非難。核兵器が二度と使われないためには「対話が不可欠」だと強調する。

 さらに、戦争放棄を定めた日本国憲法9条を、パグウォッシュ会議結成の基となった1955年のラッセル・アインシュタイン宣言とともに「良心の不滅の灯台」だと評価し、核兵器への依存ではなく「多国間主義、法の尊重、対話と正義、そして私たちが共有する人間性」こそが真の安全保障だと述べている。

 この日は、人工知能(AI)など新たな技術を核兵器運用などの軍事目的に利用するリスクや国際法上の問題点、倫理的課題などを議論した。2009年にイスラエル軍の攻撃で娘3人を失ったパレスチナ自治区ガザ出身の医師も登壇し、現地の惨状を訴えた。

 閉幕後の記者会見で、フセイン・アルシャハリスタニ会長は「われわれは核兵器を含む大量破壊兵器の根絶に力を尽くすとともに、全ての国家に紛争解決手段としての戦争の放棄を呼びかける」、カレン・ホールバーグ事務総長は「参加者が被爆地で得たものを持ち帰り、各国の政府と市民の双方に働きかけるアクションにつなげてほしい」と語った。

 世界大会は63回目。科学者、歴史学などの専門家とイスラエル元首相、イラン元副大統領をはじめ各国の元政府高官たち約200人が参加した。

(2025年11月6日朝刊掲載)

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