×

社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 夢で会えた広島の先人

 米国出張中に夢を見た。被爆者を治療した広島の医師の故原田東岷(とうみん)さんが現れて「取材はどうなっていますか」。写真でしか見たことのないご本人にそう聞かれた。どぎまぎしながら手帳を見ると、予定はすでに書き込まれていた。「大丈夫です」と答えると、目が覚めた。

 原田さんは現地で50年前にあった反核の国際会議に出席し、原爆への憎しみではなく平和の希求を訴えた。夢でお目にかかれたのは、同じ場所であるシンポジウムと学術会議の取材を進めていたからかもしれない。

 今回の会場では、日米の研究者や芸術家が核被害をなくすためには「歴史から学び、今と未来に生かすことが大切だ」と語り、アーカイブ(保存記録)の重要性と活用を口々に訴えた。その熱気が当時の会議に重なって見えた。(平和メディアセンター・山本祐司)

(2025年11月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ