国是 非核三原則 日本被団協代表委員 箕牧智之さん(83)
25年11月17日
今こそ法制化に動け
被爆者は死ぬ前に核兵器がなくなるのを見たいと願ってきた。あの苦しみを次代の子どもに味わわせたくないからだ。残り少ない人生で、非核三原則の見直しに神経をとがらせることになろうとは。腹が立つやら情けないやら歯がゆいやら。
昨年のノーベル平和賞受賞後、日本被団協には証言依頼が殺到し、高齢の私たちは身を削りながら国内外に赴いている。戦後生まれの政治家も被爆地へ足を運び、証言を聴いてほしい。核兵器や戦争の恐ろしさを学んでもらわないといけない。
高市早苗首相は政権に就いた途端、見直しを検討するという。こんな事態を防ぐために被団協は長年、三原則の法制化を求めてきたのだ。野党は今こそ、法制化に取り組んでほしい。自民党の議員にも言いたい。この三原則は自民党政権が表明し、長く守ってきた国是ではなかったか。党内から見直し反対の声が上がらなければ異常だ。
緊張高める恐れ
昨今の国際情勢から見ても問題がある。台湾有事を巡る高市首相の国会答弁に端を発し、中国とあつれきが生じている。韓国が原子力潜水艦を保有しようという動きもある。見直しを検討するだけでも、アジアの緊張を高めるのではないか。
政府には他にすべきことがあるはずだ。被団協は原爆被害者への国家補償を求めてきた。原爆や戦争で家族を失った子どもたちに見向きもせず、核兵器を日本に持ち込む議論をするというのか。
市民の関心必要
政府はよく「核兵器のない世界を目指す」と言うが、核兵器禁止条約への参加にも後ろ向きだ。高市首相も核軍縮に取り組まないトランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦したとされるから、本気ではないのだろう。
被爆者は高齢化し、運動が難しくなっている。政府を動かすには、市民の皆さんの関心が必要だ。非核三原則や平和憲法のおかげで安心して勉強し、働き、生活できていることをあらためて考えてみてほしい。(下高充生)
みまき・としゆき
東京都生まれ。1945年3月の東京大空襲を経験後、父親の故郷の広島県に疎開し、3歳で入市被爆。99年から旧豊平町議、北広島町議を各2期務めた。2021年11月から県被団協理事長、22年6月から現職を兼務。
(2025年11月17日朝刊掲載)








