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ヒロシマ 地方の視点から 講座参加 記者15人 各紙に記事

 広島市が全国の地方紙や通信社の記者を招き、8月6日の平和記念式典や被爆地の現状を報道してもらう国内ジャーナリスト研修「ヒロシマ講座」に今年は15人が参加した。市は被爆80年などで関心が高いとして参加枠を例年の10人から拡大。各記者はそれぞれ地元の視点を織り込みながらヒロシマを伝えた。

 北海道から沖縄までの地方紙14紙と時事通信社(東京)の23~37歳の記者が7月28日~8月7日に研修を受けた。被爆証言を聞き、被爆地の復興について専門家から学んだほか、原爆資料館(中区)を見学したり平和をテーマとした観光「ピースツーリズム」を体験したりした。

 各紙とも、平和記念式典に出席した地元の遺族代表や広島で継承に取り組む地元出身者たちを取り上げた。人工知能(AI)技術を用いて画面上の被爆者と疑似対話できるNHK広島放送局の「被爆証言応答装置」を体験し、同様の装置を開発する市の状況も併せて記事にした。

 新潟日報の山田史織記者は連載「語り継ぐヒロシマ」(全3回)で、広島を訪れた地元の高校生が同世代と交流する姿を原爆を自分ごとに捉える活動として伝えた。また、原爆資料館に展示されている米軍文書の原爆投下候補地に「新潟」が含まれると説明。広島、長崎に続き「次は新潟」との情報が広まり、知事が命じた市民の強制疎開を記憶する男性の話を交え、原爆を身近に考えてもらうよう工夫した。

 南日本新聞(鹿児島県)の児玉菜々子記者は、広島市内で平和教育に力を入れる地元出身の小学校教諭にスポットを当てた。取り組んだ経緯や、8月6日の登校日をどう過ごしたかをリポートした。広島と鹿児島の2拠点生活を送りつつ被爆体験伝承者として活動する男性も取り上げた。

 コラムなどには各記者の思いがにじんだ。「この夏は人生で一番、戦争や平和について考えた。ただ、これをピークにしてはいけない」(熊本日日新聞の古東(ことう)竜之介記者)「栃木でも決して人ごとにしない。伝えることを諦めない」(下野(しもつけ)新聞の鈴木祐哉記者)「今ならまだ知れる、語り継げる」(神戸新聞の真鍋愛記者)

 初めて広島を訪れたという記者も多かった。それぞれが向き合った今夏の取材経験は、各地での平和報道にもつながっていく。(藤村潤平)

<参加した記者が所属する新聞社・通信社>
 北海道新聞▽岩手日報▽下野新聞▽神奈川新聞▽新潟日報▽岐阜新聞▽静岡新聞▽中日新聞▽神戸新聞▽西日本新聞▽熊本日日新聞▽大分合同新聞▽南日本新聞▽沖縄タイムス▽時事通信

(2025年11月17日朝刊掲載)

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