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国是 非核三原則 元広島市長 平岡敬さん(97) 核持ち込み 時代錯誤

 高市早苗首相が見直しを検討していることが分かった非核三原則。核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」とした政策は、被爆国日本が国是として堅持してきた。なし崩しにされかねない現状をどう受け止め、向き合うべきか。事態を案じる人たちに聞く。

 非核三原則は国会で決議された国是であり、非常に重いもの。高市首相の考えは軽々しく、慎重さがない。核兵器を持ち込ませないことが米国の核抑止力の実効性を低下させかねないと思っているようだが、核兵器で国民の命や安全を守れるとの考え方は時代錯誤だ。本当に国民のことを考えているとは思えない。

 もし核兵器が国内に持ち込まれたらどうなるか。陸上に配備されれば、他国に狙われるだろう。攻撃されれば、80年前の広島、長崎以上のもっとひどい状況が地球上に現れて人類は滅びかねない。核兵器が存在する限り、理性を失った指導者がボタンを押したり、事故で誤って使われたりする可能性がある。全ての危険を取り除くには廃絶するしかない。

政治家こそ声を

 被爆国日本は、核兵器のない世界の実現に向け先導する役割を果たさなければならない。広島からそう訴え、核抑止力を否定してきた。広島がやるべきことは、もし核兵器が使われたら「こんな目に遭うんですよ」と訴え続けることだ。もっと広島の国会議員をはじめ政治家も声を上げていくべきだ。

 一方で、米軍の軍艦や潜水艦は核兵器を積んだまま日本に来ているかもしれない。三原則の「持ち込ませず」が有名無実化していないかという懸念はある。

 そうだとしても「堅持する」と言い続けることには重要な意味がある。周辺の国々を「日本は核武装しない」と安心させることにつながる。自国の平和を守るには周りの国と仲良くするしかない。それなのに高市首相は緊張感を高めるようなことばかりしている。台湾有事は存立危機事態になり得るとした先日の国会答弁もそうだ。

想像力働かせて

 この30年間の経済状況などで国民に不満が広がり、鬱屈(うっくつ)した気持ちが排外主義に向かっている。そうした空気が非核三原則の見直しを検討させる状況を生んでいる面もあるのではないか。政治家に利用されてはいけない。

 もっと想像力を働かせるべきだ。核兵器を持ち込ませて本当に今より平和になるのか。戦争が防げるのか。軍事力だけに頼っていても平和は訪れない。(山本祐司)

ひらおか・たかし
 大阪市生まれ。中国新聞社編集局長、中国放送社長などを経て1991年から広島市長を2期8年務めた。95年に国際司法裁判所(ICJ)で陳述し、原爆被害の非人道性から核兵器使用を国際法違反と訴えた。

(2025年11月16日朝刊掲載)

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