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社説・コラム

天風録 『沖縄と非核三原則』

 大学が運営する世界でもまれな平和博物館。2年前にリニューアルした京都市の立命館大国際平和ミュージアムを訪れ、人の背丈を超す異形の物体に驚かされた。米軍が沖縄で使った訓練用の「核模擬爆弾」の実物である▲米占領下では沖縄・伊江島の土地を奪い、特殊な訓練の演習場とした。この模擬爆弾を積んだ戦闘機が低空で目標に接近し、急上昇しつつ落とす―。泥沼化したベトナム戦争で核使用を想定した事実も物語ると聞いた▲沖縄には最大で1300発の核が配備され、時に臨戦態勢となる東アジア最大の核基地だった歴史を思い返したい。「核抜き本土並み」を掲げた沖縄返還交渉で撤去された経緯とともに▲核と隣り合わせの時代に逆戻りさせようというのか。高市早苗首相が非核三原則の見直しを検討するという。「持ち込ませず」を削れば、米軍が沖縄をまず頭に置くのは容易に想像できる。緊急時の再配備を巡る日米核密約の存在も指摘されてきた▲被爆国の首相としての見識を疑う。戦後日本が三原則に託した願いとその重みを理解しているとは思えない。すぐにも広島や長崎を訪れ、核兵器が何をもたらすのかをつぶさに学び直すことを勧める。

(2025年11月16日朝刊掲載)

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