今伝えたい ゲンの怒り 込山監督が新作ドキュメンタリー
25年11月15日
半世紀を超えて愛読される漫画「はだしのゲン」の魅力に迫るドキュメンタリー映画「はだしのゲンはまだ怒っている」が、広島などで公開されている。戦争体験者が減り、社会が変質しつつあることへの危機感を背にした込山(こみやま)正徳監督(63)の新作だ。
被爆の焦土で「わしらは人間だぞ―なめるんじゃないぞ―」と叫ぶゲンの怒りは、今も各地で続く戦火や核兵器の脅しに向けられているとの思いをタイトルに込めた。作者の故中沢啓治さんの被爆体験を伝える人や、ゲンと自らを重ねる被爆者たちの言葉を通じ、その「熱」を描き出す。
「ゲンには逆風が吹いている」と込山監督。映画では2023年、広島市教委の平和教材から「ゲン」の引用部が改訂で削除されたことなどに触れながら、戦時下の生々しい実態を伝えるのを忌避する近年の「空気」を指摘する。
24年9月放送のBS番組に取材を追加し、90分に仕上げた。自身が「ゲン」を読んだのは「還暦を過ぎてから」と明かすが、「子ども目線で戦争を描いた『アンネの日記』に匹敵する戦争文学」と確信。海外での上映にも意欲を示す。
祖父は東京大空襲で命を落とし、母からは「戦争で犠牲になるのは一般市民。戦争は絶対に駄目」と聞かされて育った。「原爆も東京大空襲も、今起きている中東やウクライナの戦火も全部つながっている。殺された人の怒りは誰かが引き継いでいかないといけない」と語る。(宮野史康)
(2025年11月15日朝刊掲載)
被爆の焦土で「わしらは人間だぞ―なめるんじゃないぞ―」と叫ぶゲンの怒りは、今も各地で続く戦火や核兵器の脅しに向けられているとの思いをタイトルに込めた。作者の故中沢啓治さんの被爆体験を伝える人や、ゲンと自らを重ねる被爆者たちの言葉を通じ、その「熱」を描き出す。
「ゲンには逆風が吹いている」と込山監督。映画では2023年、広島市教委の平和教材から「ゲン」の引用部が改訂で削除されたことなどに触れながら、戦時下の生々しい実態を伝えるのを忌避する近年の「空気」を指摘する。
24年9月放送のBS番組に取材を追加し、90分に仕上げた。自身が「ゲン」を読んだのは「還暦を過ぎてから」と明かすが、「子ども目線で戦争を描いた『アンネの日記』に匹敵する戦争文学」と確信。海外での上映にも意欲を示す。
祖父は東京大空襲で命を落とし、母からは「戦争で犠牲になるのは一般市民。戦争は絶対に駄目」と聞かされて育った。「原爆も東京大空襲も、今起きている中東やウクライナの戦火も全部つながっている。殺された人の怒りは誰かが引き継いでいかないといけない」と語る。(宮野史康)
(2025年11月15日朝刊掲載)








