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文学者が向き合った戦争 日本近代文学館で特別展 被爆作家の直筆資料も

 日本近代文学館(東京都目黒区)は22日まで、戦後80年に合わせ、秋季特別展「滅亡を体験する―戦渦と文学」を開催している。文学者の肉筆原稿や作品などを通し、先の戦争を検証する。被爆作家原民喜や大田洋子の直筆資料も公開中だ。(桑島美帆)

 青年将校がクーデターを起こした1936年の「二・二六事件」を挙国戦争の起点と捉え、朝鮮戦争が始まった50年までを視野入れ、日本文学の変遷を時系列で追う。「総力戦体制」「敗戦」など6項目に分け、所蔵資料を中心に125点を展示。連載中止に追い込まれた谷崎潤一郎の「細雪」私家版(44年)の黒塗り原稿をはじめ、文学者が戦争とどう向き合い、表現したのかを読み解く。

 当時の空気感を肌で感じられるよう「国民徴用令」を発表した官報(39年7月8日)や真珠湾攻撃を報じた夕刊(41年12月9日)のほか、日々の出来事を詳細に記した同館の初代理事長高見順の日記も随所に添えた。

 「空襲・原爆」コーナーでは、被爆作家原民喜が自作詩「碑銘」を見返しに書き入れた「夏の花」初版本、大田洋子の「屍(しかばね)の街」と長崎市出身の被爆作家林京子の肉筆原稿も見ることができる。企画展を担当した同館の吉原洋一さんは「文学も戦争に巻き込まれた。高揚してしまった作家もいる。今に続く戦争を自分ごととして考え、作品を読むきっかけにしてほしい」と話す。

(2025年11月18日朝刊掲載)

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