誕生 横田広島県政 平和施策 独自カラー示せるか
25年11月18日
広島県知事選と期を同じくして、広島市で今月、核兵器廃絶を目指す国際会議が開かれていた。科学者たちが5日間にわたって議論した「パグウォッシュ会議世界大会」。5日の閉幕後には、核抑止に頼らない安全保障の在り方を話し合うシンポジウムがあった。パネリストとして湯崎英彦知事も登壇した。
構想継承の考え
シンポは県と県主導で2021年に発足した「へいわ創造機構ひろしま」(HOPe)が主催。その代表も務める湯崎氏は「核兵器は必ず廃絶しなければならない」と会場で呼びかけた。
湯崎氏は被爆者調査に尽力した研究者の父を持つ。核兵器廃絶への思いは強く、1期目の11年には公約を具体化した「国際平和拠点ひろしま構想」を打ち出し、人材育成や研究を進めてきた。新知事となる横田美香氏(54)も、この構想を引き継ぐ考えを示す。
「湯崎カラー」の平和施策は、時に被爆地・広島市をしのぐアピール力で核兵器廃絶を国際社会へ働きかけてきた。一方、市とのすみ分けも課題とされてきた。
「私は県と市の関係は『あんパン』のあんこと外側という言い方をしている。県知事にも言ってね」。松井一実市長は9月の記者会見で、平和施策を巡る二重行政への懸念をこう説明した。市の役割は被爆の実態を伝える「あんこ」。県はそれを取り囲む「パン」。多くの人に食べてもらえるよう、県には「外側(パン)をきれいに作ってもらう」との考え方だ。
具体策は届かず
横田氏は「すみ分けた方が良いものもあれば、一緒にやった方が良いものもある」とのスタンス。ただ、知事選での17日間の選挙戦を通じ、継承路線以上の具体的な平和施策は聞こえてこなかった。片や湯崎氏。退任後の進路を「白紙」としており、市役所内には「市長選に出て、あんこまで取りにくるのでは」との見立てもある。
「核兵器廃絶は決して遠くに見上げる北極星ではありません」―。詩的な表現を織り交ぜつつ、核抑止論の危うさや欺瞞(ぎまん)を訴える。8月6日の平和記念式典で湯崎氏のあいさつは近年、首長の式辞の枠を超えて話題となってきた。
被爆から80年を迎えた今年、知事に就く横田氏が発信力と独自色をどう示せるか。「ヒロシマ」の名を背負う新しいリーダーの言動に国内外の視線が集まる。(和多正憲)
(2025年11月18日朝刊掲載)
構想継承の考え
シンポは県と県主導で2021年に発足した「へいわ創造機構ひろしま」(HOPe)が主催。その代表も務める湯崎氏は「核兵器は必ず廃絶しなければならない」と会場で呼びかけた。
湯崎氏は被爆者調査に尽力した研究者の父を持つ。核兵器廃絶への思いは強く、1期目の11年には公約を具体化した「国際平和拠点ひろしま構想」を打ち出し、人材育成や研究を進めてきた。新知事となる横田美香氏(54)も、この構想を引き継ぐ考えを示す。
「湯崎カラー」の平和施策は、時に被爆地・広島市をしのぐアピール力で核兵器廃絶を国際社会へ働きかけてきた。一方、市とのすみ分けも課題とされてきた。
「私は県と市の関係は『あんパン』のあんこと外側という言い方をしている。県知事にも言ってね」。松井一実市長は9月の記者会見で、平和施策を巡る二重行政への懸念をこう説明した。市の役割は被爆の実態を伝える「あんこ」。県はそれを取り囲む「パン」。多くの人に食べてもらえるよう、県には「外側(パン)をきれいに作ってもらう」との考え方だ。
具体策は届かず
横田氏は「すみ分けた方が良いものもあれば、一緒にやった方が良いものもある」とのスタンス。ただ、知事選での17日間の選挙戦を通じ、継承路線以上の具体的な平和施策は聞こえてこなかった。片や湯崎氏。退任後の進路を「白紙」としており、市役所内には「市長選に出て、あんこまで取りにくるのでは」との見立てもある。
「核兵器廃絶は決して遠くに見上げる北極星ではありません」―。詩的な表現を織り交ぜつつ、核抑止論の危うさや欺瞞(ぎまん)を訴える。8月6日の平和記念式典で湯崎氏のあいさつは近年、首長の式辞の枠を超えて話題となってきた。
被爆から80年を迎えた今年、知事に就く横田氏が発信力と独自色をどう示せるか。「ヒロシマ」の名を背負う新しいリーダーの言動に国内外の視線が集まる。(和多正憲)
(2025年11月18日朝刊掲載)








