国是 非核三原則 日本反核法律家協会会長 大久保賢一さん(78) 国会決議 軽んじるな
25年11月20日
「国是」とは何か。一国の政治の基本方針、つまり、内外に向けた政治的な宣言だ。法律ではないから、背いても違法という問題は生じない。理論的には、政治的な意思で変わり得る。
だから非核三原則をなぜ法律にしないのか、という議論は常にあった。米国の「核の傘」に依存したい政治家には、国是にとどめておく方が都合がいいのだろう。核兵器の持ち込みに際しても、違法とのそしりを免れることができる。現に政府は過去に米国の核搭載船の寄港を黙認してきた。
許されない転換
一方、他に日本の国是を思いつかないほど、非核三原則は国民に根付いている。仮に見直すことになれば、核兵器への依存を深める極めて危険な転換であり、決して許されるものではない。
高市早苗首相は「見直しを検討する」と観測気球を揚げたのだろうが、簡単に見直せるものでもない。三原則は1967年、佐藤栄作首相が国会で表明。その後も沖縄返還を控えた71年11月、順守を求める決議が衆院本会議で全会一致で採択されるなど、国会決議が積み上げられてきた。軽んじられるものではない。安保関連3文書を改定する閣議決定では変えられず、少なくとも全会一致の国会決議がいるという議論も出てくるだろう。
一部の政治家は、米国の核兵器を日本に配備する「核共有」まで念頭に置いているようだが、この行為は、核兵器の受領や取得を禁ずる核拡散防止条約(NPT)に明らかに違反する。日本がNPTを離脱し、国際社会の猛反発を招くことまで、彼らが考えているかどうかは怪しい。
歴史学ばぬ姿勢
首相は新進党の議員だった95年、衆院外務委員会で日本の戦争責任について、こう述べている。「少なくとも私自身は当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもない」。歴史に学ぼうともしない姿勢だ。こうした主張が「格好いい」と見られているのだとすれば、この社会は危機的な情勢にある。(宮野史康)
おおくぼ・けんいち
長野市生まれ。法務省勤務を経て1979年に弁護士登録。埼玉弁護士会所属。核兵器の違法性を訴える日本反核法律家協会に94年の発足時から加わり、2020年に5代目会長に就任した。
(2025年11月20日朝刊掲載)
だから非核三原則をなぜ法律にしないのか、という議論は常にあった。米国の「核の傘」に依存したい政治家には、国是にとどめておく方が都合がいいのだろう。核兵器の持ち込みに際しても、違法とのそしりを免れることができる。現に政府は過去に米国の核搭載船の寄港を黙認してきた。
許されない転換
一方、他に日本の国是を思いつかないほど、非核三原則は国民に根付いている。仮に見直すことになれば、核兵器への依存を深める極めて危険な転換であり、決して許されるものではない。
高市早苗首相は「見直しを検討する」と観測気球を揚げたのだろうが、簡単に見直せるものでもない。三原則は1967年、佐藤栄作首相が国会で表明。その後も沖縄返還を控えた71年11月、順守を求める決議が衆院本会議で全会一致で採択されるなど、国会決議が積み上げられてきた。軽んじられるものではない。安保関連3文書を改定する閣議決定では変えられず、少なくとも全会一致の国会決議がいるという議論も出てくるだろう。
一部の政治家は、米国の核兵器を日本に配備する「核共有」まで念頭に置いているようだが、この行為は、核兵器の受領や取得を禁ずる核拡散防止条約(NPT)に明らかに違反する。日本がNPTを離脱し、国際社会の猛反発を招くことまで、彼らが考えているかどうかは怪しい。
歴史学ばぬ姿勢
首相は新進党の議員だった95年、衆院外務委員会で日本の戦争責任について、こう述べている。「少なくとも私自身は当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもない」。歴史に学ぼうともしない姿勢だ。こうした主張が「格好いい」と見られているのだとすれば、この社会は危機的な情勢にある。(宮野史康)
おおくぼ・けんいち
長野市生まれ。法務省勤務を経て1979年に弁護士登録。埼玉弁護士会所属。核兵器の違法性を訴える日本反核法律家協会に94年の発足時から加わり、2020年に5代目会長に就任した。
(2025年11月20日朝刊掲載)








