×

ニュース

[ヒロシマの空白] DNA型鑑定へ遺髪採取 原爆供養塔で広島市 来月半ばにも結果

 広島市は20日、原爆犠牲者の遺骨返還に向けて初めて進めるDNA型鑑定のため、平和記念公園(中区)の原爆供養塔に遺骨と共に納められた遺髪の一部を試料として選んだ。名乗り出ている遺族も立ち会った。鑑定を担う神奈川歯科大(神奈川県横須賀市)へ持ち込み、早ければ12月半ばにも結果が分かる見通し。

 鑑定に出すのは、遺骨の引き取り手がいない犠牲者として供養塔に納められ、名簿で「鍛治山ミチ子」とされる遺髪。広島県府中町の会社員梶山修治さん(60)が伯母の初枝さんではないかと申し出ている。この日は市原爆被害対策部調査課の上本慎治課長と梶山さんたちが、供養塔内で骨つぼから遺髪を取り出した。

 市などによると、遺髪は一部が布に包まれた束の状態で納められ、長さはいずれも12センチほど。70本程度あったため、鑑定に最低限必要とされる約20本より多めの約50本をピンセットで取り出して袋に入れた。鑑定で使われなかった遺髪は再び骨つぼへ戻すという。

 約30分の作業を終えて供養塔から出た梶山さんは「髪の毛の保存状態は比較的良い印象を受け、つやも感じられた」と振り返り、「鑑定がうまくいき、他の遺族にも遺骨が戻ることにつながれば」と望んだ。

 市は遺髪を今月27日に神奈川歯科大へ持ち込む予定で、鑑定費用の10万円も市が負担する。同大は、鑑定作業に最短でも1~2週間はかかるとしている。

 市によると、市が原爆犠牲者のDNA型鑑定に乗り出すと中国新聞が報じた17日以降、消息不明の肉親を捜す遺族から鑑定への問い合わせが2件あった。いずれも納骨名簿に名前がない犠牲者だったため「特定は難しい」と回答したという。(山本祐司)

(2025年11月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ