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広島の中2・中富さんと仏のルオーさん 文通仲間 供養塔を清掃

■記者 武内宏介

 年齢差61歳を超えて文通する日仏の2人が5日早朝、平和記念式典の準備が進む広島市中区の平和記念公園で初対面した。安佐南区の長束中2年中富晶子(しょうこ)さん(13)と、毎年8・6にパリから訪れるオディール・ルオーさん(74)。ともに原爆供養塔一帯の草を抜きながら、平和の担い手としての使命を実感した。

 午前5時に原爆の子の像前で待ち合わせた。ルオーさんは中富さんの肩を抱いて対面を喜んだ。供養塔では2時間余り、黙々と清掃奉仕に打ち込んだ。

 作業を終えたルオーさんは「ショーコさんは孫のよう。若い世代に平和への祈りを伝えたい」と笑顔を浮かべた。中富さんは「ルオーさんは、作業をしながら、ここに眠る犠牲者と話をしているんだと強く感じた。私も耳を傾け、平和のためにできることをしたい」と応えた。6日は平和記念式典にそろって参加する。

 中富さんは、昨年8月6日付本紙朝刊に掲載されたルオーさんの記事を読んだ。14年にわたり供養塔の清掃を欠かさないルオーさんは「ヒロシマは希望」と語っていた。

 「原爆は暗いイメージなのに、なぜ希望なのか」。理解できなかった。ルオーさんの日本での滞在先に電話して住所を聞き、英語で文通を始めた。

 ルオーさんはある手紙で、平和記念公園を初訪問した1992年春の花見の様子を思い返し、「あれは希望だった」とつづった。

 「悲劇を乗り越えた広島の人の笑顔が、希望という言葉になったんだと思う」。中富さんは疑問の答えを見つけた。年齢、言葉、国境を超えた友情に突き動かされ、今夏は、原爆の子の像にささげる千羽鶴を初めて折っている。

(2009年8月6日朝刊掲載)

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