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『この人』 平和記念式典司会の広島市市民活動推進課長 篠原富子さん

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島に原爆が投下されて64年となる6日。平和記念公園で営まれる原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)で司会を務める。「厳粛さ。そして、未来への希望を感じられる式典」を思い描き、本番を迎える。

 4月の人事異動で広島市立大広島平和研究所次長から、式典を担当する課長になった。今夏、準備作業を指揮し、ボランティアと触れ合った。平和をメロディーにのせる合唱団、切り花を届ける少年たち、暑さ対策のおしぼりを配る市民…。「式典は、市民の熱意の集大成となる50分間」と気付いた。

 三原市出身。広島大卒業後の1984年、広島市に入った。原爆・平和分野と本格的にかかわり始めたのは13年目。原爆資料館で3年間、被爆資料1万点を分類し、データベース化した。

 ある日、高齢の女性が1枚のブラウスを持ってきた。被爆死した娘の遺品だった。「無念だったあの子の気持ちを伝えて」。胸を締め付けられた。「遺品の裏にある一つ一つのストーリーを刻みたい」。資料寄贈者への聞き取り調査を始めるきっかけになった。それぞれの悲しみを丁寧に記録し、被爆資料に添える今の展示方法の流れをつくった。

 今年の式典は、過去最多の59カ国から大使たちが参列する。初めてインターネットで生中継する。

 「式典から、子どもたちがヒロシマをどう継承しつつあるのか、が伝われば」。語り継ぎ、受け継ぐ被爆地の姿こそ世界に訴える力を持つ―。女性で初となる司会者は、その信念を胸に8・6の平和記念公園に立つ。中区で夫と2人暮らし。47歳。

(2009年8月6日朝刊掲載)

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