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原水禁・協 世界大会が閉幕 長崎

■記者 金崎由美

 日本原水協などと原水禁国民会議などの二つの原水爆禁止世界大会は9日、長崎市内でそれぞれ閉幕の集会を開き、広島から続けた全日程を終えた。

 長崎市民会館であった原水協の閉会総会は7800人が参加。核兵器廃絶運動(ICAN)オーストラリア支部のティルマン・ラフ代表が「核兵器廃絶を確実にするには、核兵器禁止条約の実現が不可欠。各国政府が取り組むよう、圧力をかけていこう」と呼び掛けた。被爆実態に合った原爆症認定行政への転換などを求める決議を採択した。

 原水禁は長崎県立体育館でまとめ集会。原水禁の福山真劫事務局長が「何としても核拡散防止条約(NPT)再検討会議を成功に導こう」と訴えた。参加した2200人は非核三原則の法制化などを訴える大会宣言を採択。会場から爆心地公園まで1・2キロを平和行進した。


世界大会総括 オバマ効果 活発な議論

 今年夏の二つの原水爆禁止世界大会は、核兵器をめぐる内外のさまざまな情勢を受け、広範囲で活発な議論が目立った。

 大会を貫いた雰囲気を一言で表せば「オバマ効果」だろう。広島と長崎に原爆を投下した核大国の大統領が核兵器のない世界の実現を訴えた4月のプラハ演説が、大会の議論を勢いづけた。とりわけ原爆投下の「道義的責任」について言及した点を評価する意見が相次いだ。

 海外参加者から異論もあった。プラハ演説が同時に抑止力の保持を表明し、廃絶を「私が生きているうちは無理」としたからだ。「オバマ(米大統領)はブッシュ(前米大統領)ではないが、(非暴力を提唱したインドの)ガンジー氏でもない」と米ピースアクションのケビン・マーチン代表は、過度の期待を戒めた。

 「二度と被爆者をつくらない」が原水爆禁止運動の原点。世界大会の会期中にちょうど原爆症認定集団訴訟の終結が決まり、「被爆者とともに闘ってきた運動の勝利」と沸く場面もあった。

 5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が来春に迫り、核兵器保有国に軍縮を迫る機運が盛り上がっている。一方、北朝鮮の核実験は、アジアでの核拡散の懸念を現実のものにしようとしている。それだけに核に頼らない安全保障をめぐる意見交換は活発となり、北東アジア非核兵器地帯構想の議論は例年以上に実現可能性にこだわった内容となった。

 そうした討議の流れは自然と、被爆国自身の姿勢に対する批判に行き着いた。

 「核兵器廃絶を訴えながら米国の核軍縮の足を引っ張っている。二重基準だ」と日本原水協の高草木博事務局長。日本政府がオバマ政権に「核の傘」の実効性を求めていることや、核持ち込みの「密約」問題で非核三原則が揺れていることが大きく取り上げられた。

 21世紀の原水爆禁止運動が、国際政治と市民との間の触媒の役割を引き続き果たそうとするならば、核兵器廃絶への期待感が高まる今こそが正念場だ。「廃絶は被爆国の総意」として力強く国際社会にアピールする行動力が試されている。

(2009年8月10日朝刊掲載)

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