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平和市長会議閉幕 市民主体で行動の時 国際政治動かす道筋を

■記者 東海右佐衛門直柄

 市民の力で国際政治を動かし、核兵器の廃絶を確実なステップでいかに進めていくか。長崎市で10日閉幕した平和市長会議総会の焦点はそこにあった。総会が採択した「ナガサキアピール」で、その方向と具体策は固まった。次は行動に移す番だ。

 総会の討議は、2020年までに廃絶する手順として市長会議が提唱してきた「ヒロシマ・ナガサキ議定書」をどう推進していくかが柱。来年春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議での議定書採択を当面の最大の目標に据えた。

 オバマ米大統領の登場により、廃絶に向けた国際的な機運は高まりつつある。ナガサキアピールはその廃絶の問題だけでなく、例えば各国政府に軍事費を削減して環境や貧困対策などに資金を回すよう求める内容も盛り込んだ。これら地球規模の課題解消と核兵器廃絶は、安全で安心な市民生活を営むうえで表裏一体との市長たちの認識が根底にある。同時に、幅広い市民運動との連携が廃絶への原動力にもなるとの考えだ。

 その意味で、市民の視線で国際世論のうねりを強めていく具体策がまとまったと言える。だが、廃絶を願う市民の声をどう国際政治の舞台に届けるか、道筋は容易ではない。

 議定書がNPT再検討会議で採択されるには、今年秋の国連総会で、議定書を検討するよう再検討会議に求める決議をすれば道は開ける。しかし、決議案を提出する提案国は決まっていない。

 広島平和文化センターのポル・デュイベッテル専門委員(ベルギー)によると、現在、南米や欧州など複数国での共同提案を模索しているものの、「各国が二の足を踏んでいる」。米国を頂点に、すそ野が広い軍需産業は各国政府への影響力も大きい。米国の「核の傘」に安全保障を依存する被爆国日本政府も、現状のスタンスからみて、提案国となるのは困難な情勢とみられる。

 来春の再検討会議に向け、残された時間は多くない。核兵器廃絶に向け、世界の市民の声をいかにつむぎ合わせていくか、市民が主体的に動く環境を自治体がどう整えていくか。市長たちがリーダーシップを発揮する時でもある。

ナガサキアピール要旨

 平和市長会議が10日、総会で採択した「ナガサキアピール」要旨は次の通り。

 各国政府、国連、国際機関に以下を実施するよう強く求める。

 ・2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を採択。20年までの核兵器廃絶に向け、ジュネーブ軍縮会議または10年の国連総会で多国間協議開始

 ・すべての軍に対し人口密集地域での爆弾の使用禁止を要請

 ・人権擁護、飢餓、貧困、差別、環境破壊など地球規模の問題への取り組み

 ・地球温暖化対策の着実な取り組み推進

 ・軍事費から平和推進や難民支援などへと資金配分を転換

 ・都市の意思が国連決議に反映されるような枠組みの創出


 平和市長会議は以下について重点的に取り組む。

 ・世界、特に核保有国の指導者に対し、10年に広島、長崎両市を訪問するよう要請

 ・加盟都市間の連携向上と行動力の強化

 ・各国政府や自治体、非政府組織(NGO)などとの緊密な連携の構築

 ・被爆者のメッセージを世界に伝える「広島・長崎講座」の開設を教育機関に呼びかけ、社会のあらゆるレベルで「平和・軍縮教育」を推進

(2009年8月11日朝刊掲載)

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