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シリアでスカッド試射 北朝鮮、イランと協力 5月核実験と同時期

 北朝鮮がシリア、イランと短距離弾道ミサイル「スカッド」の新型を共同開発、北朝鮮が2回目の核実験を強行したのと同時期の5月後半にシリア国内で試射したものの、失敗に終わっていたことが14日分かった。複数の外交、軍事筋が明らかにした。外交筋によると、誤着弾により20人以上が死亡、60人以上が負傷したとの情報もあり、関係国が詳しい分析を進めている。

 ミサイルのエンジンは北朝鮮、弾頭部分や誘導システムはシリアとイランが担当しているとみられ、弾道ミサイル開発での3カ国の「分業」の実態が浮き彫りになった。拡散防止に向けた国際社会の取り組みの在り方も問われそうだ。

 3カ国の関係に詳しい西側外交筋が入手した情報によると、シリア南西部から2発が発射され、想定ルートを外れたミサイルの一部がトルコとの国境に近い北部マンビジュの市場に落下。多数の死傷者を出し、シリア軍当局が現場を封鎖してミサイルの残骸(ざんがい)を回収、住民にはガス爆発が原因だと説明したという。もう1発は北東部のイラクとの国境付近に着弾した可能性がある。

 シリアの動向を注視している中東の軍事筋も発射は失敗だったと言明、誘導システムに問題があったとしている。ただ別の情報筋は「発射されたのは1発で、北東方向に飛んだと聞いている」と述べ、マンビジュ着弾に懐疑的な見方を示した。

 西側外交筋によると、2発は開発中のスカッドD(射程約700キロ)に異なる種類の弾頭を搭載。発射実験は北朝鮮が主導、大量破壊兵器開発にかかわっているとされる「リョンハップ2貿易会社」の技術者らが立ち会った。失敗の責任はシリア側にあるとし、原因究明を進めているという。

 中東軍事筋はスカッドB(射程約300キロ)の改良型だったとしている。北朝鮮は7月4日に日本海へ新型スカッドを発射しているが、シリアで試射したものと同じかどうかは分かっていない。

北朝鮮のスカッドミサイル
 北朝鮮は1970年代後半ごろに旧ソ連製短距離弾道ミサイル「スカッドB」(射程約300キロ)をエジプトから入手し、独自生産化。これを基にスカッドC(射程約500キロ)を開発、80年代後半から実戦配備し、スカッドB、Cをイランやシリアに輸出したとされる。北朝鮮が7月4日に日本海に向け連続発射した弾道ミサイル7発のうち3発は新型スカッドとみられており、韓国紙、朝鮮日報は射程について、日本を範囲に収める約千キロと報じている。

(共同通信配信、2009年8月15日朝刊掲載)

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