「オバマ大統領を呼ぼう」 核廃絶へ折り鶴の輪
09年8月29日
■記者 明知隼二
広島の中高生でつくる「中高生ノーニュークネットワーク広島」が、オバマ米大統領の広島訪問に向けて本格的に動き始めた。地球上にある核兵器より多くの折り鶴を集め、廃絶への願いを投下国の大統領に届ける。広島訪問が実現した際には、核兵器廃絶をテーマに大統領との対話を望んでいる。中高生の熱意に触発されて応援や協力を申し出る動きもあり、輪が広がり始めた。
中高生たち約30人は23日、爆心地に近い広島市中区の元安橋で2度目の街頭活動を繰り広げた。「オバマ大統領は世界を変えることができるリーダー。被爆地の若者が核兵器を無くしたいと望んでいると知ってほしい」。広島学院高2年の金森雄司君(17)が活動の意図を語る。「だからこそ僕たちは対話を求めているんです」
行動のきっかけは、中国新聞の連載「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」で昨年11月から展開したオバマ大統領に広島訪問を呼び掛ける手紙を読者から募る企画だった。
このプロジェクトに関心を持った中高生が「自分たちも何かできないか」と集まった。5月から9人で会議や勉強会をスタート。今月6日の最初の街頭活動では市内9校の約30人が参加するなど同じ思いの仲間が増えた。
「オバマさんなら核兵器を無くすために努力してくれる」と安田女子高2年の手島愛子さん(17)。中学2年のころから核兵器廃絶の署名活動などに参加してきた。オバマ大統領によるチェンジ(変化)に期待を寄せ、「私たちの声はきっと届く」と力を込める。
被爆地では現在、中高生だけでなく被爆者や平和団体、広島市なども大統領の招聘(しょうへい)へと動く。これに対し、平和運動関係者の一部からは「オバマ頼みではいけない」との批判もある。中高生たちも「オバマ大統領を呼ぶことにどんな意味があるのだろう」と自問を繰り返してきた。
「大統領の広島訪問も核兵器廃絶も、そのための国際的な環境が整わないと実現しない」。6月末にメンバーが開いた勉強会で講師を務めた大島寛・広島修道大教授(アメリカ論)は課題を指摘した。そのうえで「君たちはその環境をつくる人。小さな力かもしれないが、一人一人が舞台に立つアクターだ」とエールを送る。
広島学院高2年の中間卓也君(17)は幼いころから祖父母の被爆体験を聞いてきた。「目標はあくまでも核兵器の廃絶。困難な道のりだけど、広島に生まれ育った僕たちが行動しないといけない」
オバマ大統領にどうすれば思いが届くだろうか。メンバーは何度も会議を重ね、願いを折り鶴に託すことにした。「インパクトがない」との意見もあった。しかし「子どももお年寄りも、誰もが理解でき参加できる活動」にこだわった。何より、核兵器を一つずつ無くしていこうとの願いを、一羽一羽の鶴に折り込んでほしいとの思いがあった。
共感は徐々に広がりつつある。「若い人たちの真っすぐな思いを応援したい」「活動に加わりたい」。すでに県内外の個人から10通を超えるメールや手紙が寄せられた。
6日の街頭活動でも、修学旅行中の京都府宇治市の中学生11人がメンバーと交流し、鶴を折った。広島市中区のカフェなど4カ所は中高生の活動を紹介するチラシと折り紙を置いている。
佐伯区の砂谷中生徒会は、平和記念公園(中区)の原爆の子の像にささげようと全校生徒で折った千羽鶴を「ノーニュークネットワーク」に託した。「同世代の活動。僕たちも協力したかった」と生徒会長の3年加藤元君(14)。受け取った広島女学院高2年の高本友子さん(17)は「重みのある千羽鶴。しっかり受け止めたい」と話していた。
23日の街頭活動を含め、この日までに4300羽を超える折り鶴が集まった。 9月からは他校の生徒会やクラブへの呼び掛けも強める。「中高生が手を取り合い、核兵器廃絶の声をどんどん大きくしていきたい」。新たなうねりを生みだそうとしている。
世界の核弾頭数
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2009年1月時点で貯蔵や解体待ちを含め、8カ国が計2万3千個を超える核弾頭を保有しているとみられる。国別の概数は次の通り。米国9400個▽ロシア1万3千個▽英国160個▽フランス300個▽中国240個▽インド60~70個▽パキスタン60個▽イスラエル80個。
(2009年8月24日朝刊掲載)
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中高生たち約30人は23日、爆心地に近い広島市中区の元安橋で2度目の街頭活動を繰り広げた。「オバマ大統領は世界を変えることができるリーダー。被爆地の若者が核兵器を無くしたいと望んでいると知ってほしい」。広島学院高2年の金森雄司君(17)が活動の意図を語る。「だからこそ僕たちは対話を求めているんです」
行動のきっかけは、中国新聞の連載「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」で昨年11月から展開したオバマ大統領に広島訪問を呼び掛ける手紙を読者から募る企画だった。
このプロジェクトに関心を持った中高生が「自分たちも何かできないか」と集まった。5月から9人で会議や勉強会をスタート。今月6日の最初の街頭活動では市内9校の約30人が参加するなど同じ思いの仲間が増えた。
「オバマさんなら核兵器を無くすために努力してくれる」と安田女子高2年の手島愛子さん(17)。中学2年のころから核兵器廃絶の署名活動などに参加してきた。オバマ大統領によるチェンジ(変化)に期待を寄せ、「私たちの声はきっと届く」と力を込める。
被爆地では現在、中高生だけでなく被爆者や平和団体、広島市なども大統領の招聘(しょうへい)へと動く。これに対し、平和運動関係者の一部からは「オバマ頼みではいけない」との批判もある。中高生たちも「オバマ大統領を呼ぶことにどんな意味があるのだろう」と自問を繰り返してきた。
「大統領の広島訪問も核兵器廃絶も、そのための国際的な環境が整わないと実現しない」。6月末にメンバーが開いた勉強会で講師を務めた大島寛・広島修道大教授(アメリカ論)は課題を指摘した。そのうえで「君たちはその環境をつくる人。小さな力かもしれないが、一人一人が舞台に立つアクターだ」とエールを送る。
広島学院高2年の中間卓也君(17)は幼いころから祖父母の被爆体験を聞いてきた。「目標はあくまでも核兵器の廃絶。困難な道のりだけど、広島に生まれ育った僕たちが行動しないといけない」
オバマ大統領にどうすれば思いが届くだろうか。メンバーは何度も会議を重ね、願いを折り鶴に託すことにした。「インパクトがない」との意見もあった。しかし「子どももお年寄りも、誰もが理解でき参加できる活動」にこだわった。何より、核兵器を一つずつ無くしていこうとの願いを、一羽一羽の鶴に折り込んでほしいとの思いがあった。
共感は徐々に広がりつつある。「若い人たちの真っすぐな思いを応援したい」「活動に加わりたい」。すでに県内外の個人から10通を超えるメールや手紙が寄せられた。
6日の街頭活動でも、修学旅行中の京都府宇治市の中学生11人がメンバーと交流し、鶴を折った。広島市中区のカフェなど4カ所は中高生の活動を紹介するチラシと折り紙を置いている。
佐伯区の砂谷中生徒会は、平和記念公園(中区)の原爆の子の像にささげようと全校生徒で折った千羽鶴を「ノーニュークネットワーク」に託した。「同世代の活動。僕たちも協力したかった」と生徒会長の3年加藤元君(14)。受け取った広島女学院高2年の高本友子さん(17)は「重みのある千羽鶴。しっかり受け止めたい」と話していた。
23日の街頭活動を含め、この日までに4300羽を超える折り鶴が集まった。 9月からは他校の生徒会やクラブへの呼び掛けも強める。「中高生が手を取り合い、核兵器廃絶の声をどんどん大きくしていきたい」。新たなうねりを生みだそうとしている。
世界の核弾頭数
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2009年1月時点で貯蔵や解体待ちを含め、8カ国が計2万3千個を超える核弾頭を保有しているとみられる。国別の概数は次の通り。米国9400個▽ロシア1万3千個▽英国160個▽フランス300個▽中国240個▽インド60~70個▽パキスタン60個▽イスラエル80個。
(2009年8月24日朝刊掲載)
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