×

ニュース

「密約文書に署名」 「沖縄返還」訴訟 外務省元局長が陳述書 

 1972年の沖縄返還をめぐり、日米両政府が交わしたとされる密約の存否が争われている訴訟の第2回口頭弁論が25日、東京地裁であり、原告側が吉野文六・元外務省アメリカ局長(91)の陳述書を提出、吉野元局長は密約の存在を示す文書中の「BY」の文字について「自分が書いたイニシャルで間違いない」と明らかにした。

 杉原則彦裁判長は10月27日の次回期日で国と原告側の主張を整理、12月1日に吉野元局長の証人尋問を行う方針を示した。民事訴訟法上、公務員経験者に職務上の秘密について尋問するには当該官庁の承認が必要で、杉原裁判長は「速やかに手続きを行う」とした。

 吉野元局長は法廷でも陳述書に沿った内容の証言をするとみられ、尋問が実現すれば、これまで密約を一貫して否定してきた日本政府の主張を覆す決定的な証拠となる可能性がある。

 元局長は当時、対米交渉に当たり、これまで報道機関の取材にも密約の存在を認めてきた。

 イニシャルのある文書は、沖縄の米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本が肩代わりするという内容の71年6月の書簡。原告側が米国立公文書館で入手、証拠として地裁に提出していた。

 また吉野元局長は、米軍放送「ボイス・オブ・アメリカ」の移転費用1600万ドルを日本が負担するとの文書についても「イニシャルはないが、自分が署名したものだ」と明かし、「秘密交渉も一定期間を過ぎれば、原則として公開するべきだ」との考えを示した。

 文書の情報公開請求に対し、国側が不存在を理由に非開示としたため、作家の沢地久枝さんや元毎日新聞記者西山太吉さんら25人が、処分取り消しなどを求めて今年3月に提訴した。

 国側はこの日、密約の存在を示す米国保存の公文書について「米国側が返還交渉の途中で何らかの記録や備忘録的な文書として一方的に作成し、米側のみに存在する可能性が高い」と主張する書面を提出した。

 陳述書要旨は中国新聞ホームページに掲載しています。

(共同通信配信、2009年8月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ