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NPT成功へ協調 国連軍縮新潟会議が閉幕

■記者 金崎由美

 新潟市中央区の朱鷺(とき)メッセで開かれていた国連軍縮会議は28日、最終会合で3日間の討議を総括し閉幕した。21カ国、約90人の政府関係者や研究者らは、来年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功に向け機運を盛り上げていくことを確認した。

 朝鮮半島の非核化をめぐっては、クイーンズランド大(オーストラリア)のマリアン・ハンソン軍縮不拡散研究センター所長が「北朝鮮の核開発を阻止する決定策は見つかっていない。6カ国協議の枠組みは維持しつつ、中国による説得を求める声が出た」と報告した。

 NPT再検討会議の展望については、一橋大の秋山信将准教授が「不拡散の取り組みを強化すれば原子力の平和利用の制限につながるとの懸念が一部の国にある」と紹介。「百パーセントの楽観はできないが、違いを乗り越えようとする意思が重要だ」と討議を取りまとめた。

 会議は国連軍縮局と国連アジア太平洋平和軍縮センターの主催。毎年、日本国内で開かれ、今年で21回を重ねた。来年の開催地は決まっていない。


<解説>意思にじむ前向き議論

 5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が来春に迫った時期に開かれた国連軍縮新潟会議は、再検討会議に向けて山積する課題を再確認する一方、その成功にかける意思を強くにじませる内容ともなった。

 「核軍縮、核不拡散で前進したいとの雰囲気を反映する議論だった」。新潟会議を主催した国連軍縮部のハナロア・ホッペ部長も、終了後の記者会見でこう総括した。

 国連が今回のテーマを「核兵器のない世界に向けた新しい決意と行動」と設定したのは、オバマ米大統領が「核兵器のない世界」を訴えて以来、単なる核削減ではなく「ゼロ」こそが最終目標との国際社会の一定の合意が背景にある。

 会議には、来年のNPT再検討会議で議長を務めるフィリピン外交官のリブラン・カバクチュラン氏も出席。来日の理由を「再検討会議に向けた情報収集」と語っていた。

 しかし、NPTを強く意識した議論だったからこそ見えてきた課題も多い。

 NPTの3本柱は核軍縮、不拡散、原子力の平和利用。しかし、その平和利用が広がれば核物質の拡散や核テロの懸念が強まる。一方で不拡散の取り組みを厳しくすれば、今度は平和利用の権利が侵害されかねないと非同盟諸国の不満が募る。前回の2005年の再検討会議が失敗に終わったのも、こうした利害対立が要因だった。

 それだけに今回、参加者は口々に、来年の再検討会議に必要なものとして「政治的な意思」「リーダーシップ」を挙げた。国家間の利害を乗り越えるための鍵を再認識したことが、新潟会議の最大の成果と言えるだろう。

(2009年8月29日朝刊掲載)

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