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核密約「現在も有効」 元高官「取り決め当然」

 米軍核搭載艦船の日本への領海通過・寄港を黙認した核密約問題に絡み、首相官邸で外交政策立案に関与した元政府高官は1日、密約の存在を認めた上で「日本が『核の傘』に守られている以上(通過・寄港を認める)取り決めがあるのは当然」と言明。「(日米間で核密約を)殺したわけではない」とも述べ、密約を記した「秘密議事録」は現時点でも外交上有効との見解を示した。

 匿名を条件に共同通信に語った。

 元高官の証言は核密約の存在を新たに補強し、歴代保守政権が通過・寄港を黙認してきた背景に、「核の傘」を最優先する政策判断があったことを明確に認める内容。核密約が現在も有効だとしていることから、密約の全容解明を掲げる次期民主党政権は今後、難しい対米交渉を迫られる可能性が出てきた。

 元高官は、米国が冷戦終結後、核搭載艦船を日本に寄港させていない経緯から「(秘密議事録は)実態として死文化した」とする一方、仮に民主党政権が核密約を公開しても密約が失効するわけではないと語った。

 さらに、朝鮮半島有事に米軍が日米安全保障条約上の「事前協議」を経ずに在日米軍基地を使用できるとした密約に関しても、消滅したわけではないと述べ、核密約同様、現在も有効との認識を示した。

 元高官は「日本が守られているのに(核の通過・寄港を)駄目とは言えない」とし、「核の傘」堅持のために核密約が不可欠だったと指摘した。

 核密約をめぐっては村田良平・元外務事務次官が前任者から引き継ぎを受けたと証言しているほか、3人の外務次官経験者が関連文書の存在などを認めている。


外相重ねて否定

 中曽根弘文外相は1日の記者会見で、藪中三十二外務事務次官が「核の密約」をめぐる事実関係の調査に協力する姿勢を示したことを受け「私の考えはなんら変わっていない」と述べ、密約の存在を重ねて否定した。

 また沖縄返還に関する密約が争われている訴訟で裁判長が、密約の存在を認めた吉野文六・元外務省アメリカ局長の証人尋問を実施する方針を示したことについては「訴訟継続中なのでコメントは控えたい」と述べた。公務員経験者に職務上の秘密について尋問するには当該官庁の承認が必要となる。

日米の核密約
 米軍による日本への核兵器持ち込みは本来、1960年改定の日米安全保障条約で定めた「事前協議」の対象だが、核を積んだ米軍の艦船と飛行機の日本への通過・寄港、飛来を対象外とした日米間の秘密合意。安保改定時に日米両政府は、核搭載艦船の通過・寄港などを日本側が黙認する「秘密議事録」を交わし、63年には大平正芳外相がライシャワー駐日大使に内容を確認した。日本側に事実上の拒否権を付与した事前協議は一度も行われておらず、政府は「事前協議がない限り、通過・寄港も含め持ち込みはない」と主張してきた。日本は「核を持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を国是としている。

(共同通信配信、2009年9月2日朝刊掲載)

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