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社説・コラム

原爆投下直後のきのこ雲を撮った

■広島県安芸郡府中町 山田精三さん

 原子爆弾が投下された直後、広島にはごう音、熱風とともに、巨大なきのこ雲が発生した。目撃者はなお多数生存するが、写真は数少ない。その中でも最も早く、投下時刻から間を置かずに撮影したと思われるのが山田精三さん。歴史的な1枚には、もくもくとわき上がる雲が、鮮明に焼き付けられている。山田さんに撮影時の様子を振り返ってもらった。

 8月6日の朝、山田さんは幼なじみから飯ごう炊さんに誘われた。当時山田少年は17歳。旧制夜間中学に通いながら、中国新聞社で働いていた。その日は快晴。山田少年は仕事をさぼって、幼なじみと自宅近くの渓谷「水分峡(みくまりきょう)」(府中町)に出かけた。爆心地から約6.5キロ。そこで2人はB29の機影に気づいた…

 きのこ雲をカメラに収めた山田少年は、その後、周囲の制止を振り切って広島の市街地に向かう。爆心地から900メートル、中区胡町にあった中国新聞社の様子を確かめるためだった。自宅を出てまもなく、山田少年は変わり果てた被爆者の姿に息を飲む…

やまだ・せいそう 1928(昭和3)年8月2日生まれ。中国新聞編集局運動部で長年カープを担当、コラム執筆を続けた。

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