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社説・コラム

社説 クラスター弾禁止 廃絶へ向けた一里塚に

 大量の不発弾が市民を無差別に殺傷するクラスター弾。使用・製造をほぼ全面禁止する条約案が、アイルランドのダブリンであった国際会議で採択された。米国、ロシア、中国などは参加しなかったが、約110カ国の全会一致であり、日本も同意を表明した。

 日本政府は当初、自衛隊が保有する改良型クラスター弾を正当化する部分禁止を主張した。海からの侵攻を防ぐ抑止力とみてきたからだ。米軍との共同行動が制約される懸念もあった。しかし非参加国との協力を妨げないとの条文も入り、大詰めで方針を転換した。福田康夫首相の決断が実りを生んだのは確かだろう。

 会議はノルウェーなどの有志国と非政府組織(NGO)が主導した。この形で実を結ぶ軍縮条約は、1997年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)以来である。この時も日本は参加をためらったが、当時の小渕恵三外相の判断で署名。地雷使用禁止の流れを推し進めた。

 クラスター弾は空中で数百の子爆弾に分かれて飛散し、広範囲に落下する。住宅地や農地に不発弾が残り、知らずに民間人が触れて多大な人的被害をもたらすことから、地雷と並び「悪魔の兵器」とも呼ばれてきた。

 条約の中身は画期的である。不発弾になった場合に自ら無能力化する機能などを備えた最新型こそ除いたが、世界の保有弾の9割以上が対象となる。被害者支援も盛り込んだ。

 日本は最終日直前まで消極的姿勢に終始していた。米国なども参加する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)での協議にこだわったからである。しかし、CCWが進展しないために始まった会議だ。リーダーシップを取れず、対米追随という印象を与えたとしたら残念である。

 12月の調印式に向け、日本はもっと存在感を示したい。まず自衛隊が保有する数千発の廃棄を急ぐべきだ。有事が念頭にあるにしても、侵攻阻止のためにクラスター弾を国内で使うのは現実的ではない。不発の子爆弾除去のために、培ってきた地雷の探知技術活用も大切だ。医療、リハビリなども技術支援ができる。

 非参加国への呼び掛けも条約の柱だ。世界の大多数の国が保有せず、開発せずの意思表示をした。その意思を力として、米国、ロシア、中国など軍事大国へ働き掛けを強め、クラスター弾廃絶への一歩としたい。それが日本の国際貢献だろう。

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