×

社説・コラム

「核兵器のない世界」 元NSC局長 のアンドレアセン氏に聞く

■記者 金崎由美

 元米国務長官のキッシンジャー、シュルツ両氏ら4人が1月、米ウォールストリートジャーナル紙上で「核兵器のない世界」を呼びかけ、世界の反響を呼んだ。冷戦期に米の核政策を担った元政府高官らが、超党派で核兵器廃絶を訴える意義とは-。クリントン政権で国家安全保障会議(NSC)の国防政策・軍備管理局長を務め、4人の提言に賛同者として名前を連ねたスティーブ・アンドレアセン氏(47)に聞いた。

 -記事は昨年1月に続いて2度目です。発表のきっかけは。
 レーガン大統領とゴルバチョフ書記長(当時)が「核兵器のない世界を目指すべきだ」という理念に合意した1986年のレイキャビク首脳会談から20年を記念し、当時の政策担当者らが集まった。その場で出た意見を基に、シュルツ氏らが記事を寄稿した。  反響を受けて昨年10月、われわれは再度集まり、米露が率先して実現するべき事項などを具体化した記事にまとめた。

危険すぎる存在

 -「冷戦の戦士」らが共有する危機意識は。
 テロリストなど非国家の集団に核兵器という「けん制」は通じない。国家同士の紛争の抑止力としても危険すぎる存在となった。  米ソ冷戦が終わった後、核兵器が広まる危機はむしろ高まっている。すべての国が参加し、核拡散という現代の脅威に対応するには核兵器廃絶を目指すしかない-。これが、2度の会議に参加したわれわれの総意だ。

 -来年1月、米大統領が交代します。次期政権の課題は。
 包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准や、兵器用核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約)の実現に努力することで、イラン、北朝鮮、インドなどに対しても説得力ある存在となることだ。

 民主党の大統領候補に確定したオバマ氏はキッシンジャー元長官ら4人の名前を挙げて核兵器廃絶を訴えた。共和党のマケイン氏も「米国が保有する核兵器は多すぎる」と核軍縮に言及した。われわれの考えと重なる部分が多く、心強い。

米世論に行動機運生む

 -四人の呼びかけは米の国内世論に影響を与えたと思いますか。
 国民的な対話を深めると同時に「理念から行動へ」という機運を高めた。「核の脅威に対する取り組みは不十分。方向も間違ってきた」という合意が育ちつつある。

 -核兵器廃絶は実現すると思いますか。
 すぐには難しいかもしれない。しかし、例外なくすべての国が「頂上」を目指してこそ、核の脅威に対処できる。安全保障環境に照らしても、十分に現実的な目標だ。

スティーブ・アンドレアセン
 国務省政治軍事局、国家安全保障会議などを経て、ナン氏が共同議長を務める研究所「核脅威イニシアチブ」のアドバイザー。ミネソタ大ハンフリー公共政策研究所講師。47歳。

「核兵器のない世界」
ペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員会委員長を含めた4人の連名記事。今年1月の寄稿記事は、米露に対し、戦略兵器削減条約の延長▽冷戦期から残る大量攻撃計画の破棄▽核兵器や核物質の保安基準の強化-などを提案した。

(2008年6月25日朝刊掲載)

関連記事
コラム 視点 「米核政策 矛盾からの脱皮を」(08年4月30日)
元米高官4人が核廃絶構想発表 (08年4月25日)

年別アーカイブ