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社説・コラム

アルジェリアの核被害 アンマール・マンスーリ学会長に聞く

■記者 道面雅量

 1960年代、フランスはアルジェリアのサハラ砂漠で大気圏と地下の計17回の核実験をした。原水禁国民会議系の世界大会に招かれたアルジェリア核科学技術学会のアンマール・マンスーリ会長(52)は、被害の実態解明に尽力。「事実を隠そうとするフランスの秘密主義の壁を崩したい」と力を込めた。

 アルジェリアで核実験被害が明るみに出始めたのは90年代半ばから。実験場の近隣住民や、砂漠を横切る遊牧民に多発する健康被害を市民団体が掘り起こした。

 「地下実験なのに過大出力で放射能の雲が噴き出したり、実験施設の廃材を浅い穴に放置したりと、フランスの技術的なずさんさも際立つ」と指摘する。

 ただ、汚染範囲など詳しい実態はほとんど分かっていない。フランス政府が「国防機密」として情報開示を徹底的に拒んでいるからだ。「核実験は植民地での人権無視の一つ。その補償の突破口になるのを彼らは恐れている」とみる。

 核実験は62年のアルジェリア独立後も続き、被害拡大を招いた。継続を容認する条項が独立協定にひそかに盛り込まれていたためという。「独立当時の新政府に核被害の恐ろしさを知る者はいない。無知につけこまれた」

 今回が初来日。広島、長崎両市で大会関連行事の講師を務めた。「日本には核被害の恐ろしさを世界に知らせる特別の資格と使命がある。手を取り合おう」と熱く呼び掛けた。

(2008年8月9日朝刊掲載)

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