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社説・コラム

G8議長が広島に集う意義 元軍縮大使 猪口邦子氏に聞く

■記者 金崎由美

 主要八カ国(G8)の下院議長会議(議長サミット)が9月2日、広島市で開かれる。31日には、「平和と軍縮」をテーマにしたシンポジウム(国際核軍縮促進議連など主催)も同市である。主要国の立法府のトップが被爆地に集い、核軍縮を議論する意義について、ジュネーブ軍縮会議の議長や軍縮大使を務めた経験がある猪口邦子衆院議員に聞いた。

 -G8の議長が被爆地に集まる意義は。
 まさに、核軍縮への扉が開かれる歴史的な契機だ。G8の全国民が広島に集まると例えていい。「核軍縮が国際社会の優先事項」という認識をつくること自体、意義がある。

 -核をめぐる世界の動きをどうみますか。
 核拡散防止条約(NPT)は批判もあるが、核拡散を防ぐことに成功している。さらに強化することが課題となっている。  もう一つ、重要度を増しているのは、冷戦時代とは違った拡散の危機への対応だ。米中枢同時テロを機に、テロリスト集団が核兵器を入手する危険性が高まった。それを防ぐ最後の手段は完全な核軍縮しかない。核兵器ゼロを目指すことが、各国の国益に見合う選択肢になってきた。

 -NPTには問題点がいくつもあります。
 米、露、中、英、仏だけに核兵器の保有を認めている上、5カ国が条約で定める「軍縮義務」を実行しておらず、非核保有国の不満は強い。不平等性を中和する意味でも、NPT再検討会議で核保有国の責任を問うことが重要だ。

 -2010年の再検討会議に、どんな成果を求めますか。
 核弾頭の具体的な削減目標と、完全な廃棄を検証する方法を5カ国が示すことだ。北朝鮮のNPT復帰も重要。時間は少ないが、NPTは懸命に働きかけるべきだ。

 -NPTに入らず核開発を続けるインド、パキスタン、イスラエルにどう対応するべきですか。
 3カ国は、「核保有国が核軍縮すれば自分たちも核軍縮する」と言っている。3カ国を引き込むには、5カ国が義務を果たさなければならない。

 私が重視するのは、兵器用核分裂性物質禁止条約(FMCT)。核兵器の材料の生産を禁止する条約は絶対に必要。速やかに交渉を始めるべきだ。成立すれば3カ国も加盟すると表明している。FMCTで縛りをかければ、拡散防止の意義も大きい。

 -日本はどんな役割を果たすべきですか。
 被爆国として、日本は核兵器廃絶のリーダーシップを取る責任がある。7月の洞爺湖サミットでは、議長総括で核軍縮と「核保有国の責任」に言及した。キッシンジャー元国務長官らは「核兵器のない世界」と題する論文を発表した。日本は世界の流れをとらえてより強く核兵器廃絶を訴えるべきだ。

猪口邦子(いのぐち・くにこ)
 1952年、千葉県生まれ。上智大外国語学部、米国エール大博士課程修了。上智大教授などを経て2005年から衆院議員。05-06年、内閣府少子化・男女共同参画担当大臣。56歳。

(2008年8月22日朝刊掲載)

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