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社説・コラム

G8議長へのメッセージ

拝啓 G8議長のみなさんへ
広島訪問に感謝と敬意を表します。
あの日。
視界いっぱいの閃光と衝撃波に、家屋は全壊。人間は吹っ飛びました。
残骸の山。折り重なる死体。火?の中の彷徨。果たして何人が生き残れたでしょう。
放射線による病魔は今なお暴れ、人間を苦しめ続けます。
被爆者は、心の痛みを何十年もかけて乗り越えました。同じ苦しみを次世代に味わわせてはならないと、核兵器がこの世からなくなることを悲願しています。
議長のみなさん。
被爆者の一人である私から、四つのお願いがあります。
核兵器をめぐり世界が相克する今、人類は保持するのか、廃棄するのかの選択を迫られています。国際社会では核兵器廃絶を求める声が高まっています。堂々と廃絶に向け、力を尽くしてください。
次に、核拡散防止条約(NPT)は十分とは言えませんが、現段階では核拡散を防ぐための唯一の枠組みです。せめてこのNPTを堅持して拡散を防ぎ、保有国は核軍縮に全力を注いでください。
そして、見聞されたヒロシマを、帰国後、自国民に十分知らせてください。
最後に、貴国のみなさんの広島訪問を、心待ちにしております。
ネバーギブアップ! 被爆者は核兵器廃絶を決してあきらめません。自国の独善を排し、国際社会の平和な未来のため、お互い認め合って進もうではありませんか。
敬具
日本被団協代表委員  坪井 直

坪井 直(つぼい・すなお)
 広島工業専門学校(現広島大工学部)3年生の時、爆心地から約1.2キロの広島市富士見町(現中区)の路上で被爆した。中学校の数学教員や校長を経て1994年から、広島県被団協事務局長、2004年から理事長。2000年から日本被団協代表委員。83歳。

(2008年8月31日朝刊掲載)

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