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社説・コラム

英国にともったヒロシマの心 「平和の歌」感動与える

■向井圭子さん(66)=広島コベントリー会会員・世界をみる会代表

 広島に原子爆弾が落とされ63年目の8月6日、英国中部のコベントリー市で、原爆死没者の追悼と核兵器廃絶を求める集会があった。第2次世界大戦中、ドイツ軍の爆撃で被害を受けた町。私と夫は、この町と縁のある人がつくる「広島コベントリー会」会員として参加した。

 町の中心の大聖堂は爆撃で周囲の壁だけが残り、今では平和の象徴だ。戦後、隣に建てられた新しい大聖堂で、毎夏、ヒロシマとナガサキのための会が持たれている。宗教も人種も関係なく、市長から市民まで幅広く集まる会。今年は約80人が参加し、その国籍は20にのぼった。

 まず平和の鐘が鳴らされ、参加者が次々とろうそくに火をともした。厳かな中、原爆被害の説明の後、佐々木禎子さんと折り鶴の話に。そのつど人々は短い沈黙の時を持つ。

 私は、平和記念式典で合唱される「ひろしま平和の歌」を披露。フルートの伴奏を得て、歌声がチャペルに響いた。事前に歌詞の英訳を配布。深い感動を与えられた、と、好評もいただき、「歌」は今後、この集会や関連行事で歌われることとなり、日本で録音し送る約束もした。

 参加者が折った折り鶴も並べられた。私たちは、原爆資料館から提供された被爆者の描いた絵27枚を展示。8月いっぱい聖堂内に掲示される。

 今年の平和記念式典で読み上げられた平和宣言に対し、コベントリーのアンディー・マチェット市長から返ってきたのは「核兵器のない世界をつくることを目標にしたい」との言葉。広島とコベントリーがいっそう強く結ばれたと感じた。

 広島コベントリー会は、この地に約1年住んだ岡本秀子代表が2年前、草の根交流のため発足させた。毎年コベントリー爆撃の記念日(11月14日)に集会を開き、相互訪問などを重ねている。

 私は英国に7年半滞在し、帰国後「世界をみる会」(スタート時は「イギリスをみる会」)の代表を務める。今後もさまざまな国・地域の実情を正しく理解、交流し、少しでも世界平和に貢献したいと考えている。

(2008年8月29日朝刊掲載)

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