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社説・コラム

NPTにかわる核兵器禁止条約を タクール教授 広島で講演

■記者 桑島美帆

 国連大学の前上級副学長でカナダ国際政策推進センターのラメシュ・タクール教授(59)が18日夕、広島市中区で「核拡散防止条約(NPT)体制の改革」と題し、講演した。国連訓練調査研究所(UNITAR)広島事務所主催。タクール教授は、NPT体制を「時代遅れ」とし、核兵器廃絶を目指す新しい国際的な枠組みの必要性を訴えた。

 講演要旨は次の通り。

 化学兵器禁止条約のように、すべての国に対し核兵器の保有を禁止する核兵器禁止条約をつくるべきだ。核抑止力と核不拡散。この二つに頼った核兵器の安全保障体制は危機的状況にある。

 1968年に条約が成立したNPTは、当時核兵器を持っていた米ロ英仏中にだけ保有の「正当性」が認められた。だが、5カ国は自らに課せられた核軍縮義務を放棄し、核不拡散ばかり問題にしてきた。

 核軍縮と核不拡散は同時に求めるべきものだ。国連安全保障理事国がすべて核保有国であるため、国連を舞台に核軍縮を進めることができない。40年前と比べ国際情勢は変わり、原子力技術は進歩した。NPTの賞味期限は切れたのだ。

 むしろNPT体制が、核兵器廃絶を阻んでいるのではないか。ケビン・ラッド豪首相は今年6月に来日した際、「核不拡散と軍縮の国際委員会」を創設した。世界で唯一核兵器の攻撃を経験した日本政府こそ、もっと積極的に核兵器廃絶に向けた新しい国際的な体制づくりに取り組んでほしい。

(2008年9月20日朝刊掲載)

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