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社説・コラム

艦載機 岩国移転が加速

■編集委員 山本浩司

 ジョージ・ワシントンの横須賀基地配備は、原子力空母が初めて日本を母港化することにとどまらず、在日米軍再編の中で2014年に予定される米海兵隊岩国基地(岩国市)への艦載機移転が一歩進んだことを意味する。岩国市をはじめとした中国地方の住民にとって、決してひとごとではない。

 艦載機移転は、原子力空母の配備で増す神奈川県の負担軽減や、約260万人といわれる米海軍厚木基地(神奈川県)の周辺住民への航空機騒音の低減を目的に持ち上がった経緯がある。日本政府は、地元や米政府との約束を履行するため、岩国基地への艦載機移転の手続きを急がねばならなくなった。

 岩国基地は艦載機移転後、極東地域における軍事的プレゼンスが格段に大きくなる。もともと朝鮮半島中央部まで戦闘攻撃機で30分足らずの位置にある上、配備機数が従来の2倍、約120機に増加し、燃料補給の必要がない原子力空母を軸に広域展開が可能になるからだ。今後、米軍が「不安定の弧」とする中東まで含めた地球規模の情勢変化にさらされることになる。

 一方、艦載機移転までにも、配備機数が2倍に増える岩国基地空域のあるべき姿や、艦載機部隊の訓練目的に沿った空域を探るため、中国地方で米軍機の飛行回数が増加したり、従来は飛んでいなかった場所での飛行が増えたりする可能性は高い。山間部、沿岸部を問わず、中国地方の自治体や住民は注意が必要だ。

(2008年9月26日朝刊掲載)

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