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社説・コラム

大島寛教授に聞く オバマ大統領誕生でCTBT批准など現実味

■記者 森田裕美

 共同通信ワシントン、ニューヨーク支局長を歴任し、オバマ次期大統領を取材した経験もある広島修道大法学部の大島寛教授(60)に、新政権の核軍縮の可能性を聞いた。

 -今回の選挙戦をどう見ますか。
 人種差別意識が残る中で、すごいことが起きた。米国には草の根民主主義が生きており、それが力強く表れた。変革を求めた国民自身がこれまでと違う米国をつくり上げるダイナミズムに感銘を受けた。

 -核兵器廃絶に向け明確な姿勢を示した初の大統領となります。
 使用を前提に小型核開発に意欲を燃やしたブッシュ政権とは異なり、核兵器廃絶を政策の柱にしている。核拡散防止条約(NPT)が定めた核保有国の軍縮努力や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准への努力を明言し、新しい核兵器はつくらないとも断言している。言動は具体的で現実味がある。それらを行動に移せば、核軍縮は確実に進むだろう。米議会も民主党議席が増え、CTBTを批准をしやすい環境が整っている。

 -核政策の転換は容易ではないのでは。
 米国内には核問題より優先される懸案が多い。オバマ氏は軍へのパイプがないなどの課題はある。核兵器廃絶も単なる理想主義でめざしているのではなく、「一方的な軍縮はしない」として核抑止も捨ててはいない。ただ、一国主義から多国間協調や対話路線へ政策転換すれば廃絶に向けて前進する。まだ遠い目標であっても、実現するには米国の大統領の決断が重要だ。

 -被爆地には期待が高まっています。
 核をめぐる展望は変わり、被爆地の訴えも米国にシンクロするだろう。これまではヒロシマがいくら頑張って訴えても、米国の一部の人たちにしか届かなかったかもしれない。しかし、これで受け入れられる環境は整ってくる。

(2008年11月6日朝刊掲載)

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